室井 報道の自由がなくなったことは本当にこの国にとって大きいと思う。だから、安倍首相の暴走を止められなくなってしまったんですよ。しかもイスラム国問題では日本人2人が人質になっているのがわかっていたのに、カイロでイスラム国対策の支援で2億ドルの無償資金協力を発表しちゃった。その後日本とイスラエルの国旗をバックに会見もした。最悪です。
鳩山 イスラム国については、15年1月に安倍さんがイスラエルでイスラム国に対して挑発的な発言をしたことは大きなミスです。アラブ世界から「日本はイスラエルと組んだ」と思われてしまった。彼がイスラエルで発言をしたことに対しては、批判的なメッセージを出したんです。イスラム国は民族間の問題もあるかもしれないけど、貧しい状況に置かれた人たちがいたたまれなくなって救いを求めて入るというパターンもある。追い詰められた人々が結集したという側面もある。いわゆる新自由主義が行きすぎて、結果としてアメリカでは3人の人間が全体の50%の資産を持っているというめちゃくちゃな状況です。そのくらい大きな貧富の差が出てくれば、当然それに不満をもつ人も出てくる。原因をなくさない限り、どうにもならないということですし、そもそもイスラム国は、アメリカがイラクやアフガニスタンの辺りに侵攻、介入していなければ、出現しなかった存在です。
室井 だからいまこそ、友愛の精神だと思います。「違うところも認めあう。理解し合う」ということですね。
鳩山 おっしゃるとおりです。すべての人が同じではない。違っていることがむしろ喜びであり、その違いを認めて、だから助け合う。友愛の真髄を理解していただいて嬉しいです。敵、味方じゃない。相手を理解して、紛争や戦争にならないうちにどうしたら対話と協調で防げるか。政治家はそれを考えなきゃいけない。でも安倍さんは、北朝鮮の問題になるとつねにトランプさんの後ろについて「やれ! やれ!」と言っている。
室井 税金を使って国民を危険に晒しているのと同じです。ただ、安倍さんは世間にウケている。しかも安倍さんは、アメリカの言いなりなのに、「憲法はアメリカに押し付けられたから改正する」とか「戦後レジームの脱却」ってすごく矛盾しているじゃないですか。それこそ「保守」ってなんなのかと。沖縄いじめもそうですけど、保守陣営こそ、アメリカにすべてを売り渡しているのに。
鳩山「保守」だったら、自分の国は自分で守るということなんでしょうが、それは“武力で守る”のでは決してありません。対話と協調という外交で守る。「リベラル」は多様な価値観を認めるということですから、全然矛盾しないんです。
室井 ただ、いまの右傾化と安倍一強という社会全体の流れは、はっきり言わせてもらうと民主党政権が政権を取って期待したのに、期待はずれだったという反動もあると思うんです。そのへんについて、鳩山さんはどうお考えなのか、ぜひお聞きしたいんです。
(後編に続く)
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鳩山由紀夫 元内閣総理大臣。1947年生まれ。東京大学工学部卒業。86年の初当選したのち、93年に自民党を離党し新党さきがけ結党に参加。96年民主党を血統し代表に。09年、第93代内閣総理大臣に就任。政界を引退した現在は東アジア共同体研究所理事長として様々な活動を行う。
室井佑月 作家、1970年生まれ。レースクイーン、銀座クラブホステスなどを経て1997年作家デビューし、その後テレビコメンテーターとしても活躍。現在『ひるおび!』『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS)などに出演中。連載に「週刊朝日」(朝日新聞出版)、「女性自身」(光文社)などがある。
(構成・編集部)
最終更新:2018.02.12 11:08