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富岡八幡宮殺傷事件・富岡茂永容疑者が「日本会議」初の支部長として歴史修正主義運動に邁進していた過去

 ちなみに、茂永容疑者が会長を務めていたこの「東京都神道青年会」も相当に政治的な組織だ。

 そのHPには、〈「民族精神の基盤たる神社振興の本義に徹して、国家再興のため強力なる運動を展開せん」という崇高なる精神を以て発会されました〉という時代がかった文章が掲げられ、活動紹介には「東京都神社庁・神政連東京都本部・日本会議等関係諸団体との連携した活動」「主権回復記念日(4月28日)靖國神社参拝及び国民集会への参加」という項目。「基本活動方針」というページには「昨年来、国会では連日のように譲位問題が取り上げられ、国家最大の重儀である大嘗祭の斎行がいよいよ現実味を帯びて参りました。神政連・神青協との連携を密にして、憲法改正問題と併せ、時局問題には迅速且つ真摯に対応して参ります」という挨拶文が掲載されていた。

 そして、茂永容疑者が会長を務めていた時代、この東京都神道青年会はフィリピン・レイテ島で戦没者慰霊祭を企画するなど、日本軍の戦死者を英霊として讃える事業に熱心に取り組んでいた。

 いずれにしても、茂永容疑者は宮司の職にあった90年代から2000年代初頭にかけて、神社本庁の戦前回帰志向を体現するような極右思想の推進者として活動していたのである。ところが、それから20年。標的は、“自虐史観”から“身内である姉”に変わり、猟奇的ともいえる殺人事件を引き起した。

 周知の通り、日本会議は歴史修正運動とともに、愛国心や道徳教育の推進、伝統的な家族制度の復活にも力を入れている。彼らは「戦後の自虐史観教育で祖先を尊ぶ心が失われ、家族の繋がりが断たれた」などと主張して、「だから、伝統的な家族像を復活させねばならない」というようなことをしきりに喧伝してきた。

 しかし、そんな伝統的家族にこだわってきた団体の支部長第一号で、その運動に邁進してきた人物が、姉弟で骨肉の争いを繰り広げ、親族殺人を犯すというのは皮肉としか言いようがない。

 マスコミは、今回の殺傷事件の原因として、茂永容疑者の神職らしからぬ性格や放蕩三昧の生活をしきりに報道しているが、しかし、その経緯や冒頭で紹介した手紙などをみると、むしろ、茂永容疑者を犯行に走らせたのは、歴史ある神社の後継者、カネと人が集まる大神社元宮司としての歪んだエリート意識だったのではないかと思えてくる。

 自分だけが「伝統」を体現する特別な存在であり、自分を妨げる者は排除されて当然であり、その正義の名の下にどんな暴力も許される、そんな特権意識──。

 そう考えると、茂永容疑者がかつて先の戦争を肯定する歴史修正主義に邁進していたことと、今回の事件は地続きのようにも思えてくるのだが……。

最終更新:2017.12.15 11:33

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