しかも、「公約破り」といえば、「高等教育の無償化」もかなり酷い。公約では、「真に支援が必要な所得の低い家庭の子供に限って」授業料の減免措置や給付型奨学金の拡充を謳っていた。「真に支援が必要な」などとわざわざ限定している時点で本気度が疑わしいが、案の定こちらも選挙後になって、無償化の対象は住民税非課税世帯(年収約250万円未満)で検討していることが発覚した。
まず、無償化の対象が狭すぎると言わざるを得ないだろう。現に、平成28年度の文部科学白書によると、子ども2人が私立大に通っている場合、勤労世帯の平均可処分所得のうち教育費が占める割合は約半分となっている。さらに2人の子どもが下宿をした場合、生活費を含めると所得のじつに8割に及ぶ。
それでなくても日本は世界のなかでも大学の学費が高額で、安倍政権になってからは国立大の学費を上げつづけていく方針をとっている。このような状況下で無償化を住民税非課税世帯に限定することは、「高等教育は無償教育の漸進的な導入によってすべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること」という国連人権規約からかけ離れすぎている。
だが、自民党はそうした批判をかわすためか、高等教育費の負担案として「出世払い」制度なるものまで提案。プランとしては、対象者に所得制限は設けず、授業料を政府が肩代わりし卒業後に年収に応じて返済するのだという。つまりは、たんなる借金制度であり、無償化でもなんでもないのである。
森友・加計疑惑から逃れるために消費増税の使途変更のためと言って解散し、600億円を超える費用を投じた選挙では「幼稚園・保育園をタダに」「低所得世帯は大学授業料無償」などと並べたが、まさにインチキばかりだったわけだ。
さらに、だ。度肝を抜かれたのは、年収800~900万円を上回る子どもがいない世帯に対しては増税する案を検討するつもりでいるらしいことだ。この件については追って論じたいが、子どもを産めない事情や産まない自由を考慮せず、子をもつか否かで人びとを分断するという、非常に許しがたい案だろう。