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内田樹が喝破! 安倍独裁を受容する“株式会社マインド”の蔓延…「実行」「結果」と叫ぶ安倍首相、「独裁で何が悪い?」と冷笑する有権者

 思想家の内田樹が、発売中の「サンデー毎日」(毎日新聞出版)11月26日に寄稿した論考が話題となっている。「総選挙の総括」として“民主主義を失望させる政治”の本質を語ったものだ。内田はまず、得票率と議席専有率の大きなギャップについて問い、小選挙区制では投票率が下がれば下がるほど巨大組織票を持つ政権与党の議席が増えることを指摘した上で、こう述べている。

〈それゆえ政権与党は久しくどうやって投票率を下げるかにさまざまな工夫を凝らしてきた。そして、彼らが発見したもっとも有効な方法は「議会制民主主義はもう機能していない」と有権者に信じさせることだった。〉
〈事実、「立法府は機能していない」という印象操作に安倍内閣ほど熱心に取り組み、かつ成功した政権は過去にない。〉

 続けて、国会での安倍首相や大臣の答弁からの逃亡や詭弁、強行採決などの暴挙の数々をあげ〈これらの一連の行動は与党の奢りや気の緩みによってなされたわけではない〉と断じる。

〈そうではなくて、「国会は実質的にはほとんど機能していないので、あってもなくてもどうでもよい無用の機関だ(現に国会閉会中も行政機関は平常どおり機能していたし、国民生活にも支障は出なかったではないか)」という印象を国民の間に浸透させるために計画的に行われているのである。〉

 さらに内田は、政党が選考する候補者が執行部に従順な政治家ばかりであることを指摘し、それらを〈「議員は個人の政治的意見を持つ必要はない。いかなる政策が正しいかを決定するのは上の仕事である」という採用条件を知った上で就職した政党「従業員」〉と表現する。そして、ここにも乱暴な国会運営によって「立法府は機能していない」と国民に印象付けるのと同様の〈配慮〉が示されていると語る。

 つまり、安倍政権が満天下に知らしめる立法府の軽視が、国民に国会議論は無意味であるとの感覚を喚起させている。ゆえに投票率が低下する。そこに小選挙区選挙制度の弊害と、無能(無脳)なチルドレン議員の大量生産が重なることで、政権が引き起こしている言論の府の機能不全が逆説的にその状況を維持する国会内勢力の選挙大勝を招いている。そう内田は分析しているのである。

 その上で、安倍首相が「私は行政府の長」でなく「私は立法府の長」と自称したことや、自民党改憲草案で創設されている緊急事態条項の問題点を挙げながら、内田は日本の「独裁制への移行」を指摘する。行政府と立法府がひとりの為政者のもとで一体化し、憲法さえ超越する強大な権限の付与を可とする体制は「独裁」と呼ぶほかないから、頷かざるをえない。

 ところが、ネットでは、この内田の論考を「迷文」「めちゃくちゃな論理展開」「ただの陰謀論」などと揶揄する向きがある。誤読未満の解釈怠慢だろう。テキストは一見、現政治体制及び選挙制度が有権者にもたらす問題が、特定の意図(=政権の狙い)のもとになされていると主張しているようでいて、実際のところは現況を現象として俯瞰的に論じているにすぎない。

 むしろ重要なのは、その図式がなぜ、国民の政治体制に対する憤懣ではなく国会(議会制民主主義)に対する失望や諦観につながるのか、という論点ではないか。

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