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『ユニクロ潜入一年』横田増生インタビュー

離婚で姓を変えバイトに潜入…ユニクロと闘うジャーナリストが語った巨大企業のブラック体質と柳井社長の洗脳

──前回は訴訟になりましたが、今回の潜入ルポではその後ユニクロ、柳井社長から、なんらかのリアクションはあったのでしょうか。

横田 今回はノーリアクションですね。今回本にまとめるにあたり、柳井さんにインタビューを申し込んだのですが、「お断り申し上げます」と断られました。前回のこともあり、知らんふりしておけというつもりなのでしょう。文春連載の時、9度取材を申し込みましたが、「話すことは何もありません」という対応でした。柳井さんには聞きたいことが沢山ある、なんで訴えたのか、決算会見に出さないのか、アルバイトを辞めなくちゃいけなかったのか。でも逃げたままです。

──今、ユニクロ、そして柳井社長に訴えたいことは何でしょう。

横田 今回の取材で、末端の人間が苦しんでいることがはっきりした。せめて繁忙期や土日、感謝祭の時だけでも時給をあげてほしいですね。年中、同じ時給というのは、他企業を見てもあり得ない。ブラックというより“奴隷”です。ユニクロで働き、柳井社長と末端の激しい格差、しかしそれが見えづらい実態もありました。接客業で、一見、小綺麗にしているし、“やりがい”を植え付けることで、その格差を感じさせないシステムなんでしょう。潜入取材は現場の“本音”を知ることができるし、“本当の姿”も見ることができます。一方で、ギャンブル性も高い。何が出てくるか、出てこないか潜入するまでわからない。1年間働いて何もなかったら書けませんからね。収入面でも大変です。今回は結果オーライでしたが、潜入取材は本当にギャンブル。しかし、50 歳になって敢えてリスクをとって潜入したのは、それ以上にユニクロにムカついたというのが本音です。繰り返しますが、取材を断れば書かないだろう、メディアは自分の思い通りにいく。そんなユニクロの姿勢が嫌だった。その上秘密主義で、取材を受けてもくれないし、会見もパージされた。潜入するしか方法はなかったのです。そして今後ももちろん、定点観測としてのユニクロウォッチは続けます。いろいろ秘策も考えていますので、楽しみにしていてください。
(了)

■横田増生
1965年福岡県に生まれ。アイオワ大学大学院ジャーナリズムスクールで修士号。帰国後、物流業界紙「輸送経済」の記者。編集長を務め、フリーに。著書に『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』(朝日文庫)、『ユニクロ帝国の光と影』(文春文庫)、『評伝 ナンシー関―心に一人のナンシーを』(朝日新聞出版)、『中学受験』(岩波新書)、『仁義なき宅配 ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン』(小学館)など多数。


最終更新:2017.10.30 12:42

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