本稿冒頭に引いた発言のなかで安彦氏は『ガンダム』で描こうとしているものは「人間はなぜ、戦争をしてしまうのか」というテーマについてだと語っていた。それはペシミスティックで冷徹な問いであると同時に、遠い未来には争いがなくなる日が来るのではないかという希望も含まれている。
「ガンダムは主人公アムロ・レイたちの広い意味での成長物語なのです。歴史もおなじだと思うんです。おなじ失敗をくりかえしてしまったとか、この道はいつか来た道だとか。それだけなら進歩がなく絶望的で悲しいだけ。でも、人類は愚かながらも経験を積み重ねることで少しずつ成長し、利口になっている部分もあるのではないか、昨日よりましな、今日があると思いたい。それがガンダムをとおして訴えたいものの一つなのです」(前出『原点』)
安倍首相はいよいよ本丸となる憲法改正へと本格的に乗り出している。現在、9条に「加憲」するというかたちで平和主義を無効化するような姑息な手段に出始めているが、これから先、このような目くらましの手口が次々と飛び出してくるだろう。しかし、それは安彦のいうようにしょせん「いつか来た道」でしかない。そのことを私たちはしかと認識すべきである。
(編集部)
最終更新:2017.08.16 06:54