改めていっておくが、加計問題の本質は、加計学園の獣医学部新設が認められたプロセスにある。しかし、加戸氏が10日に語った内容は、「いかに獣医学部誘致が愛媛県と今治市において悲願であったか」ということだけで、そのプロセスが公正であったことの証拠、加計ありきだったことを否定する証拠はたったの一つも提示することができなかった。
当たり前だろう。加戸氏が愛媛県知事に就いていたのは、第二次安倍政権が発足する3年前までであり、特区指定の行政プロセスにはまったくかかわっていないし、そもそも知事は申請する側であり特区選定プロセスなど知る由もないのだ。真相解明につながる話なんて最初からできるはずがないのである。
しかも、加戸氏は安倍首相のお友達、日本会議人脈で、第二次安倍内閣では、安倍首相の指名で教育再生実行会議の委員に選ばれ、何の関係もない同会議で、突然、「総理の言葉を借りまして、固い岩盤も愛媛県という小さいドリルであかないので、実行会議の大きなドリルで穴をあけていただければ」などという演説までぶったこともある。こんな露骨な安倍応援団の証言をまともに取り上げろ、というほうがおかしいだろう。
いや、逆に、加戸氏の発言をメディアが積極的に取り上げたら、安倍政権のほうが困ったのではないか。たとえば、加戸氏は昨日の閉会中審査でもこんな台詞を口走っていた。
「有識者会議の判断と、内閣府のあるいは虎の威を借りるような狐の発言を用いてでも強行突破していただいたことは、私は大変よろこんで今日にいたっています」
これって、つまり、狐=内閣府が虎=安倍首相の威を借りて、獣医学部設置を突破したという話であり、逆に加計学園の獣医学部特区選定が安倍政権の恣意的な決定だったことを認める発言ではないか。
ところが、青山センセイもネトウヨも、加戸氏のこういうトンデモ発言のことは一切触れずに、「加戸氏の発言を取り上げないマスコミはおかしい」ということだけを主張するのである。あげくは、加戸氏のTBS『報道特集』をめぐる妄想のようなイチャモンまでもっともらしく語らせる始末だった(この件については、あまりにくだらないうえ、説明すると長くなるので、別の機会があれば検証したい)。