さらに、岐阜県大垣市では、共謀罪施行後はさらに激化するであろう市民への監視の実態を先取りするような事件が発生している。岐阜県警大垣警察署の公安部門である警備課が、何もしていない一般市民を監視し、収集した情報を無断で横流ししていたのだ。
あらましはこうだ。2014年7月、計画段階の風力発電に対して反対運動が起きるとみた大垣警察署は、一般市民の情報を収集し、その情報を中部電力の子会社・シーテックに提供。シーテックが作成した警察との議事録によると、警察側は市民が開いた風力発電の勉強会の内容を“同勉強会の主催者は風力発電に限らず、自然に手を入れる行為自体に反対する人物”と報告。くわえて、警察はこんな“忠告”まで行っていた。
「大垣市内に自然破壊につながることは敏感に反対する『×××××氏』(註・実際は実名)という人物がいるが、御存じか」「60歳を過ぎているが東京大学を中退しており、頭もいいし、喋りも上手であるから、このような人物と繋がると、やっかいになると思われる」
だが、ここで名指しされた市民は、当時、風力発電の計画があることも知らなかった。この市民に限らず同議事録ではほかにも、風力発電計画に対して何のアクションも起こしていない一般の市民が実名で「(反対派住民と)強くつながっている」などと“危険人物”であるかのように取り上げられていたのだ。
犯罪の嫌疑があったわけでもないのに、環境問題に関心をもって反対運動などに参加した経験があるだけで個人情報が集められ、警察にマークされる。共謀罪が施行されたきょうからは、こうした行為がさらに横行することは明白だ。
共謀罪の取りまとめ役となっている自民党法務部会長である古川俊治参院議員は、共謀罪法案が審議されている段階から、沖縄で起こっている基地反対などの市民運動も「組織的犯罪集団として認定される可能性はある」と、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)の取材で明言していた。国策である原発や基地建設に反対し運動に参加しただけで“国の敵”と扱われ、組織的犯罪集団として逮捕される。そうした全体主義国家に、きょう、日本は“なった”のだ。