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「天皇が安倍政権の生前退位への対応に不満」報道はやはり事実だった! 宮内庁が毎日新聞に抗議できない理由

 また官邸は、安倍首相のブレーンのひとりとして知られる日本会議系の学者・八木秀次氏に「おことば」の内容を事前漏洩していた。“退位反対”の旗振り役とし、世論を中和させるためだと見られる。

 八木氏は有識者会議のヒアリングメンバーにも選出されたが、そこでも「天皇は我が国の国家元首であり、祭り主として『存在』することに最大の意義がある」などと述べ、今上天皇が国民に語った「象徴」としてのあり方を真っ向から否定した。さらに、安倍首相がねじ込んだと言われる他の保守系メンバーも、次々と“天皇に弓を引く”発言を連発した。

「ご自分で定義された天皇の役割、拡大された役割を絶対的条件にして、それを果たせないから退位したいというのは、ちょっとおかしいのではないか」(平川祐弘東大名誉教授)

「宮中にあっても絶えず祈っておりますぞということで、これが私は天皇の本当のお仕事であって、あとはもうお休みになって宮中の中でお祈りくださるだけで十分なのですと説得すべき方がいらっしゃるべきだった」(故・渡部昇一上智大学名誉教授)

「皇室の存在意義が日本と国民のために祈り続けることにあると私は繰り返し述べました。その最重要のお務めも御体調によっては代理を立ててこられたという事実があります。であれば、国事行為や公務の一部を摂政にお任せになるのに支障はないのではないか」(櫻井よしこ氏)

 だが、言うまでもなく今上天皇の「生前退位」の意向は、わがままでも思いつきでも、ましてや公務が億劫だから放り投げたわけでもない。だいたい、「保守派」の「天皇は宮中にこもり、祈りを捧げ、存在してさえいればよい。公務は不要だ」という主張は、単に、明治期につくられた“万世一系の神話的イメージ”を現代の天皇制に押し付け、今上天皇の「象徴」としてあり方を根本的に否定しようとするものだ。

 しかし、繰り返し強調しておくが、今上天皇は“民主主義と平和主義、皇室の両立”という難題を、「象徴天皇」というかたちで、いかに安定的に引き継がせるかに苦心してきた。「生前退位」の恒久的制度化は、今上天皇にとって、これを実現させるための正念場だったのだ。にもかかわらず、安倍官邸は、数々の“刺客”を送りこみ、天皇への個人攻撃まで行なって、その意味を消散しにかかった。今上天皇が、「ヒアリングで批判をされたことがショックだった」と漏らすもの当然だ。

 周知のとおり今上天皇は、第二次安倍政権で踏み込んだ護憲発言を行っており、2013年に官邸が高円宮久子親王妃を五輪招致活動に利用をした際には「苦渋の決断。天皇皇后両陛下も案じられているのではないか」と官邸を批判した風岡長官を誕生日会見でかばいながら「今後とも憲法を遵守する立場に立って、事に当たっていくつもりです」と皇室の政治利用に釘を刺している。

 そう考えると、今上天皇が述べたとされる「自分の意志が曲げられるとは思っていなかった」というのも、自身の意向が率直に実現しそうにないという現況への不満というより、官邸が「象徴天皇」のあり方を捻じ曲げようとしていることに対する、強い懸念とみるべきだろう。天皇制と民主主義はそもそも矛盾した仕組みだが、その調和のための智慧までを無下にすることはできない。

 いずれにしても、天皇退位の特例法案が国会で可決・施行されるのは時間の問題だ。安倍政権は、2018年末に「平成」を終わらせる日程を描いているという。変わるのははたして元号だけなのか。よくよく考える必要があるだろう。

最終更新:2017.12.04 03:35

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