「危機はない」という人間はテレビで見たことがないので、おそらく山口は「騒ぎすぎだ」と批判している人のことをそう言っているのだろう。しかも、山口は、この真っ当な指摘をした数少ないコメンテーターや評論家が、みんな北朝鮮に行ったことがあって、接待で籠絡され、朝鮮総連にコントロールされている、というのだ。
こいつの“見てきたようなことを言う”妄想言い切りトークは前々からだが、ここまでおかしくなっているとは思わなかった。じゃあ、訊くが、最近、「世界中で北朝鮮が危機だと騒いでいるのは日本のマスコミと総理大臣だけ」とコメントした元防衛相でタカ派国際政治学者の森本敏氏も、ソウル滞在中にツイッターで“ソウルは日本のように騒いでいない”として、「日本が米朝のチキンレースに参加すべきではない」とつぶやいた橋下徹元大坂市長も、さらにはブログで「どうせ何も起きない」「馬鹿騒ぎ」と珍しく冷静な情勢判断をしたネトウヨの神・田母神俊雄氏も北朝鮮から接待を受け、コントロールされているというのだろうか。
ちなみに、本サイトで、連載対談をしている室井佑月氏も一貫して、テレビや週刊誌で「北朝鮮ミサイル危機を騒ぎすぎだ」と批判していたひとりだが、本人に聞くと、「北朝鮮? 行ったことあるわけないじゃない。バカじゃないの」と一蹴。また、同じくテレビで安倍政権による北朝鮮危機の扇動を批判していた元共同通信ソウル特派員で、ジャーナリストの青木理氏にいたっては、2、3年前から、北朝鮮に入国禁止状態になっているという。
いや、青木だけじゃない。実は、北朝鮮は少し前から日本の報道陣を次々入国禁止にしていて、多くのリベラル系のジャーナリストや評論家、新聞記者も北朝鮮に入国できなくなっているのだ。
こんな情報も知らないでわけ知り顔で、「危機がないと言っている奴は絶対2、3年以内に北朝鮮に行ってる」などといっているのか?
ちなみに、先の室井佑月氏は山口氏の妄想を否定した後、苦笑しながらこんなコメントをしていた。
「あたしが、北朝鮮からいきなりミサイル攻撃されることなんてないし、米朝戦争だってすぐに起きないといったのは、山口さんの大好きな安倍さんや閣僚のみなさんがのんきに休暇とったり、外遊していたからですよ。評論家とかコメンテーターにケチつける暇があるなら、自分の親分に『せっかく煽ってるのに、そんなことされたらバレバレですよ』と文句言えばいいじゃん」
室井の言うように、北朝鮮情勢が安倍首相や山口が煽るような状況にない、というのは、政治状況や国際情勢を冷静に分析すれば、誰にでもわかるような客観的事実なのだ。それを、「危機を否定したものは全員、北朝鮮と裏でつながっている」というような妄想を平気で垂れ流すのだから、山口の陰謀論体質には頭がクラクラしてくる。