いや、それどころか、この日のマツコはいつものツッコミはどこへやら。これまで見たことないくらいキムタクに気を使いまくり、番組全体がキムタクヨイショ大会と化していたのだ。
そもそも、この番組、タイトル通り“夜の街を徘徊して、偶然、いろんな人に出会う”のが趣旨なのに、キムタクマツコが徘徊した場所は、テレ朝敷地周辺。明らかにキムタクのために、“安全なホーム”を用意したとしか思えないものだった。しかも、やたら、キムタクのフレンドリーさやいい人ぶりばかりが強調されていた。
たとえば、テレ朝前で、キムタクが一緒に仕事をしたことがある『お願い!ランキング』(テレ朝)のAPを務める女性にバッタリ会うのだが、その女性はなんと高校生のころに、地方にドラマのロケに来ていたキムタクに出会い、「テレビの世界を目指します」と語り、実際にその夢をかなえ、『お願い!ランキング』にキムタクが出演した際再会を果たしたというエピソードの持ち主。そんな偶然ってあるのだろうか。
とにかく最初から最後までこんな調子で、マツコは結局、キムタクに対し“みんなが言えないけど、本当は聞きたいこと”など、何ひとつ質問しなかった。
「あなた、なんで飯島さんと4人を裏切って、ジャニーズ事務所をとったのよ?」
「スマスマ公開謝罪のときの、あのドヤ顔はないんじゃない?」
「なんで解散って聞いて、すぐハワイから帰って来なかったの?」
「工藤静香の尻にしかれてるの?」
「大晦日の焼肉は、誘われなかったのか、誘われたけど断ったのか、どっち?」
いま日本中のみんながキムタクにいちばん聞きたいことといえば、“キムタク裏切り”の真相以外にないだろう。しかし、マツコは冗談交じりにすら、こうした疑問に触れることは一切なかった。それどころか、こんなことを言ってヨイショする始末。
「絶妙なバランスで生きてきてるよね。あなたの覚悟と世の中の要求が絶妙なバランスなのよ。覚悟しているランキングで言ったら芸能界トップ3に入っていると思うよ」
覚悟と要求のバランス? もはや何を言ってるのかよくわからない。かつての過激さを失った近年のマツコでもここまで媚びるのは見たことがないというくらいの気の遣いようだった。しかもこのあからさまなヨイショに、さすがに謙遜するかと思いきやキムタクは真に受けて、なんの衒いもなくこう応じたのだ。
「覚悟ランキングでいったら、けっこう行くと思うよ。本気度でいったら」
いやいや、苦楽をともにしたメンバーとともにジャニーズ事務所を独立する覚悟もなければ、自分を貫いた結果グループを終わらせた“裏切り者”“戦犯”の誹りを甘んじて引き受ける覚悟もないこの男を、覚悟があるなどと思っているのは、世界中でおまえだけだよと画面の前で多くの人がツッコんだと思うが、もちろんマツコがそのツッコミを代弁してくれることなどなかった。