「ただ、その回数が明らかに多い。電話やメールは、ほぼ毎日のように連絡を取り合っていました。我々の常識から言って“一線を超えた”という感覚です。田窪氏は今井氏の部下である香山弘文・原子力国際協力推進室長(当時)とも銀座の東芝御用達クラブ『B』で一緒に飲んでいました(香山氏は「田窪氏に支払いをしてもらったことはない」と回答)」
さらに記事では、独自入手した極秘の社内メールや当時の複数関係者による証言から、原発事業による“東芝崩壊”とこの田窪氏・今井秘書官の関係のディテールを次々に浮かび上がらせている。しかも、田窪氏をはじめ、WH社買収時に東芝社長だった西田厚聰会長、そして今井秘書官への直撃取材まで敢行。詳しい内容は昨日発売の「文春」を読んでもらいたいが、先に触れたように、東芝再生に血税が投入される前に、安倍首相はその原発政策の過ちを認めて責任をとるべきだ。
だが、原発事業で崩壊した東芝を尻目に、今後も安倍政権は国策として原発政策に邁進し続けるだろうし、今井氏にもなんのお咎めもないだろう。それは、本サイトが折に触れて言及してきたように、安倍政権はいま今井氏抜きでは成り立たないと言われるほど、この首相秘書官にコントロールされているからだ。
事実、第一次安倍政権で内閣秘書官を務めて以降、安倍首相と急接近した今井氏は、首相の行動日程やスピーチ原稿をすべて取り仕切り、原発の再稼働や海外輸出を始め、アベノミクスやTPPなどの政策決定のプロセスにも、麻生太郎副総理や菅義偉官房長官ら側近議員よりも深く関わっていると言われる。
たとえば、「文藝春秋」2015年12月号掲載の森功「首相を振りつける豪腕秘書官研究」では、その暗躍ぶりが具体的にレポートされている。これによれば、15年夏の安保法制を強行採決した直後、政権は「新アベノミクス」「一億総活躍社会」をぶちあげたが、これも今井氏の発案だった。しかも、このとき今井氏は「今度のアベノミクスは、安保から国民の目をそらすことが大事なんです」とうそぶいたという。さらに、14年11月の“消費増税先送り解散”も今井氏のシナリオ。また、「戦後70年談話」も安倍首相と直接やり取りをしながら、今井氏が手がけたものだったという。
これだけではない。今井秘書官は安倍首相を囲いこみ、その結果、現在首相周辺では一度今井氏を通さなければ話すら聞いてもらえない。それほどの状況ができあがっているという。
「総理に会おうと思って、日程を管理している今井さんに連絡を取ろうにも、秘書官室にはいないし、携帯電話にも出ない。話が出来ても、『どうしても総理じゃないとダメですか?』と、こう来る。会う会わないは総理が決めることなのに、今井さんの判断で止められてしまうんです」(新潮社「週刊新潮」14年4月3日号より、自民党関係者のコメント)
「総理の日程調整を今井氏が一手に引き受けているから、どうしてもみんな遠慮してしまう。国対委員長の佐藤勉氏でさえ総理への面会を断られ、『おいおい何様だよ』とこぼしていた」(講談社「フライデー」16年6月13日号より、自民党職員のコメント)