教育勅語を肯定する小籔千豊(フジテレビ『バイキング』16年3月7日放送回より)
森友学園問題は籠池泰典理事長の突如の認可申請取り下げ表明で、政界との癒着疑惑がうやむやになってしまうのではないかという懸念が広がっているが、もうひとつ暗澹とすることがある。それは、森友学園問題を機に「教育勅語じたいは間違っていない、むしろ復活させるべきだ」という主張が頭をもたげてきたことだ。
この期に及んで国会で「親孝行、友達を大切にする、夫婦仲良くする、高い倫理観で世界中から尊敬される道義国家を目指すもので、復活すべき」などと答弁した稲田朋美防衛相はもちろん、右派評論家連中も必死で教育勅語と森友学園問題を切り離し、復活論をがなりたてている。
さらに、芸人の小籔千豊も3月7日の『バイキング』(フジテレビ)でこんなことをドヤ顔で述べていた。
「僕は教育勅語じたいは何にも悪くないと思います。なにを教育勅語に関して問題になっているのか、意味が分からないです。(略)お父さんお母さんを大切にしましょう、一生懸命勉強しましょう、まわりに感謝し、公の心で社会貢献しましょうみたいなことガッチリ書いてありますよ。何があかんの。ええことと悪いことがごちゃごちゃになってると思うんです」
さすがネトウヨ芸人、籠池理事長が9日の囲み会見でまくしたてた「教育勅語、どこが悪いん? 12の徳目、夫婦仲良く、勉強がんばりなさい、それのどこが悪いん?」という主張とあまりにもそっくりで笑ってしまったが、しかし、これは笑い話ではすまされない。小籔あたりまでがテレビで堂々とこんなことを口にし始めると、国民の間に「森友はおかしいけど、教育勅語は悪くないんじゃ……」なんていう勘違いが広がりかねない。
だとしたら、こちらも今更だが、教育勅語の本質をきちんと指摘しておかなければならないだろう。教育勅語には、籠池も稲田も小籔も意図的にネグっていることがある。それは、明治天皇の名の下に発布されたこの言葉が、天皇のために命を投げ出すことを子どもたちに教え込むものだったという事実だ。
漢文訓読形式で書かれている教育勅語は一読しただけでは意味がわからないが、冒頭、「皇室の先祖が国を始めたのは遠い昔のことで、徳を積み上げてきた」「億兆の国民が心を一つにして、代々その美徳を行ってきたこと、これが国体(天皇を中心とした国)の精華であり、教育の淵源もここにある」ということから始まる。