しかも、その裏には、安倍首相の影もちらついている。濱田はもともと安倍首相の母・洋子氏と親しく、その縁か2010〜11年には下野時代の安倍晋三と現・神奈川県知事の黒岩祐治とのトーク番組『晋ちゃん&黒ちゃんのシンクロナイストーク』なる番組もつくっていた。
「濱田氏は05年にDHCから『キレイはマネから おしゃれは勇気』という美容本を出版しており、吉田会長ともつながりがあった。DHCシアターはそういう関係から始まったものでしょう」(政界関係者)
ご存じの通り、吉田会長といえば、2014年にみんなの党・渡辺喜美氏に8億円もの供与を「週刊新潮」(新潮社)で暴露、大問題へと発展したことが記憶に新しいが、このとき、「渡辺氏を通じて安倍晋三首相にも接近しようとしていた」(「FACTA」14年5月号)とも報じられている。いずれにしても、政界への影響力行使に色気を出す吉田会長にとって、DHCシアターの安倍政権をアシストする露骨な極右的姿勢は、当然の流れだったのかもしれない。
しかし、8億円供与問題でもわかるように、吉田会長のやり方にはこれまでさまざまな批判が起こってきた。
そもそもDHCは、大学で使用される外国語テキストを翻訳して販売するという「大学翻訳センター」として出発(DHCとはこの頭文字を取ったもの)。当然ながら版元より著作権法違反で訴えられ、この事業は頓挫するが、その後、化粧品やサプリメント販売が見事に当たり、いまでは売上が1000億円を超える大企業へと成長した。
しかしその一方で、数々のスキャンダルや不祥事も起こってきた。1992年には六本木に元社長秘書をママに据えた会員制クラブを開店したことが「週刊新潮」で取り上げられたが、2001年にはさらに「週刊文春」(文藝春秋)が「仰天内部告発 化粧品会社DHC社長『女子社員満喫生活』」と題した記事を掲載。記事によれば〈気に入った女子社員と豪遊し、豪華な自宅には高給で女子社員からお手伝いさんを雇ったが身長、体重を書かせた〉というが、この報道に対し吉田氏は前代未聞の10億円という超高額損害賠償請求訴訟を東京地裁に起こした。結果として「文春」が敗訴したが、この高額訴訟と判決には「メディアが萎縮する」「言論の自由を脅かす」として批判が巻き起こった。
この吉田会長の強気な姿勢は、DHC商品をめぐるトラブルでも垣間見える。06年に清涼飲料水「アロエベラ」からWHOが定める基準値以上の発がん性物質ベンゼンが検出され、厚労省が自主回収を求めたり、09年には根拠のない表示を行っていたことが問題視され公正取引委員会より排除命令を受けるなど、さまざまな騒ぎを起こしてきたが、もっとも象徴的なのが、ダイエット食品「メリロート」の問題だ。