警察庁ホームページより
警察組織による、警官の犯罪の隠蔽――。毎日新聞10月3日付の「懲戒処分 違法疑いの警官ら未発表 昨年、全国99人」は、新聞が久しぶりにうった“警察不祥事のスクープ”だった。
今年1月警察庁が2015年に不祥事で懲戒処分を受けた警察官と警察職員は293人と発表していたのだが、そのうち多くの不祥事が隠蔽されていたことがわかったのだ。
毎日新聞が警察庁と全国47都道府県警察に情報公開請求をし、報道発表の有無や各事案の詳細について追及したところ、昨年1年間で、不祥事などにより懲戒処分を受けた警官ら293人のうち実に99名が、窃盗、業務上横領、強制わいせつ、迷惑防止条例違反、速度違反など、法令違反の疑いがあるにもかかわらず、警察側は処分時に公表していなかったことがわかった。
その一例はこうだ。「東京都警察情報通信部の技官」が、都内の地下鉄駅で女性の上半身に触れ、とがめた女性を突き飛ばした挙句、駆け付けた駅員2名に暴行を加えたとして、迷惑防止条例違反と暴行容疑で逮捕。警察庁は昨年12月、減給3カ月(10分の1)の懲戒処分とした。だが、この事案を警察庁は発表しなかった。
しかも情報開示された「処分説明書」では、不祥事を起こした者の詳しい所属部署や氏名欄が「黒塗り」だったという。警察庁は毎日新聞の取材に対し、発表基準について「人事院の公表指針を踏まえて定めた警察庁の発表指針にのっとり行っている」と回答。同じく都道府県警察も「警察庁の指針を参考に判断」「具体的内容は回答を差し控える」と明確な基準を明かそうとしない。
だが通常、一般人が同様の行為に及ぶと、逮捕された後、当局が氏名や容疑などを報道機関に発表する。容疑者が“身内”の警察官だということで未発表にするというのは、警察という巨大かつ公的な組織による“隠蔽”と言わずしてなんと言うのか。まったく呆れるほかないが、しかし、これは氷山の一角と見るべきだろう。