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奈良県が有名デザイナーにロゴデザイン料540万円! 地方創生で自治体が代理店的ぼったくり商法の餌食に

 しかし、こうした批判は明らかに見当違いだ。そもそも、この問題は「水野のデザインに540万は当たり前」とか「業界のマネタイズを否定するな」とか、そういう話ではない。本質は、まさに地方自治体が公共性の高い単発イベントのロゴデザインにこんな金額の税金をつぎ込んでいいのか、という問題だ。

実際、国民文化祭のロゴは公募が一般的で、その賞金も非常に安く抑えられている(たとえば13年山梨と14年秋田は5万円、15年鹿児島が2万円)。納税者からみれば「数万円で済むのに大枚を叩くのはなんで?」「どうして公募や競争入札をしなかったの?」という疑問が生じて当然だろう。

 しかも、今回は公募や競争入札によらず特定の相手を任意に選ぶ随意契約方式で行われているが、その経緯も不透明だ。随意契約は、地方自治法でタイトな条件が付されている。地方自治法第234条2項では随意契約が可能となるのは政令で定める場合に該当するときに限ると定められ、また同法施行令167条の2ではそのケースが記載されている。

 今回の場合、荒井知事が議会で「熊本県が同じデザイナーに委託したくまモンは525万円でした。くまモンの経済効果は計り知れないものでございます」と述べているように、奈良県側は同法施行令167条の2における「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」と考えているようだが、そもそも、件のロゴデザインがくまモンのような経済効果を生むというのはありえないだろう。

 周知の通り、くまモンはいわゆる「ゆるキャラ」であって、着ぐるみが各種PRイベントに参加するほか、関連キャラクターグッズやパッケージイラストを売りにした各種商品が多数展開されている。他方、今回のロゴは鹿や鳥のイラストが描かれているもののデザインの一部分にすぎず、キャラクターではない。さらに言えば、国民大会用に作成したロゴに多少の商品価値があろうとも、大会後もそれが持続するかは大いに疑問だ。くまモン的な商法がほとんど望めないという市民団体側の指摘は極めて妥当である。

 しかも、実行委員会側が決めたという540万円との金額が、いったいどのような経緯で出てきたのかも不明瞭だ。奈良県議の川田ひろし氏は23日、ツイッターでこのように議会質問を報告している。

〈ロゴマークの決定は、デザイナーとの打合せ記録、通信記録、審査記録が一切ない。行政文書開示請求では「書類は一切ない」との答えだ。その点を聞いたが明確な答弁はしない。何故しないのか?いつまでも同じ答弁を繰り返すので、答弁の証拠の提出を求めた!やっぱりおかしい!〉

 ようするに、このロゴの一件で真に議論されるべきは「デザインに大金を支払うのは妥当か」という一般論ではなく、個別に、もっぱら奈良県側が「競争入札に適しない」として随意契約を断行し、根拠のない巨額を支払ってしまったことの適法性なのである。

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