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日本のお笑い芸人はなぜ政治風刺ができないのか? マキタスポーツ、水道橋博士が語ったその根本的原因とは?

 だが、欧米のコメディアンたちがやっているのは、敢えて空気を読まず、世間に波風を立てることで笑いを起こす「風刺」である。日本の笑芸には、この「風刺」がない。これに関し、前掲「TV Bros.」でマキタスポーツはこのように書いている。

〈これに関しては「パーティがないからパーティジョークの必要無し」ってことだと。「社交の場」の在り方は名称上パーティであっても、向こうのパーティとは違いますよね。同じように、向こうで「政治」と言ってるものと、相変わらず日本の「政治」は違うんだと思うんです、向こうの政治や、政治的な場にはジョークが必要なんでしょう。「風刺」がないとダメなんですよ、マナー的に。日本は風刺が無くてもやってけるんです。だから日本人がやってる「政治」は、政治じゃないのかもしれない〉

 笑いに「風刺」を入れるためには、当然、権力に対する強烈な皮肉や、ギリギリの表現が求められる。空気を読み過ぎる日本の芸人たちからは、こういった表現に挑戦しようという意識が生まれないのだが、日本のお笑いに「風刺」が生まれない原因は芸人たちのその特性だけにあるのではない。少しでも尖った表現は排除しようとするテレビ局のスタッフにも問題がある。

 映画ライターの高橋ヨシキ氏は、モンティ・パイソンが「アーサー王伝説」をパロディ化し王室や教会を徹底的にバカにし尽くした映画『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』をテーマにした、作家・高橋源一郎との対話のなかで、「お笑い」「コメディ」の本質的な役割についてこう話している。

「まあ、もともとコメディっていうのはそういうことをするジャンルなはずですね。つまり、権力をもっている方が強いに決まってるんだから、もってない側は何が出来るかっていったら、何も出来ないんだったらただ押さえつけられるだけになってしまうんですけれども、その代わりこっちはギャグにして笑い飛ばすことぐらいは残されているっていう。それが許されなくなるんだったら、ホントそれは恐怖社会ですよね」(『すっぴん!』(NHKラジオ)16年7月8日放送分より)

 松本人志や小籔千豊とは違い、世間の空気に迎合しないで、一流の「風刺」を情報番組のなかで見せてくれる芸人は現れるのだろうか? 
(新田 樹)

最終更新:2017.11.12 02:53

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