東大は真珠湾攻撃からわずか4カ月後の1942年4月に軍の要請に基づき兵器開発のために工学部の定員を倍増させ、現在の千葉大学の敷地に第二工学部を新設させられた。そこで、軍からの有無をいわせぬ武器研究と開発を強いられた。戦後、東大は学問が戦争に利用されたという深い反省から、次の3原則を表明した。
(1)軍事研究はもちろん、軍事研究として疑われる恐れのあるものも一切行わない
(2)外国を含めて軍事関係から研究援助は受けない
(3)軍関係との共同研究は行わない、大学の施設を軍関係に貸さない、軍の施設を借りたりしない、軍の研究指導をしない
2011年に作成された研究ガイドラインでも「一切の例外なく軍事研究を禁止している」としていたが、先の安倍政権の閣議決定をきっかけに、2014年12月に情報理工学系研究科の「科学研究ガイドライン」が改定され、条件付きだが“軍事研究解禁”となった。翌2015年1月16日付の産経新聞がスクープしたものだ。戦後、半世紀以上にわたって先人たちが守り続けた「軍事研究禁止」の大原則が、アッサリ転換させられてしまっていたのだ。恐ろしい話である。
しかし、さらに恐ろしいのが同書の最終章に書かれた「進む無人機の開発」という話だ。
いま、世界の軍隊では無人機導入が急速に進んでいる。自国の兵士の“安全確保”のためというのがその理由だが、一方で無人攻撃機によって多数の一般市民が犠牲となっているというから、なんともブラックな話である。無人攻撃機は兵士が安全施設にいながら相手を殺せる非常に恐ろしい兵器だ。当然、これまで日本の企業はそんな恐ろしい兵器の開発に手を染めていなかった。しかし、武器輸出に舵を切ったいま、逆に言うと、開発に遅れをとっているということになる。そこで、防衛省はいま、国民の知らない水面下で、あのイスラエルとの共同研究・開発を進めようとしているというのだ。
イスラエル国防軍は世界でも有数の無人攻撃機保有を誇っている。隣接するパレスチナ地区への空爆も、最近はほとんどがこの無人攻撃機によるものだといわれている。そのため、技術力もアメリカに次ぐ高度なものを保有し、海外輸出も積極的に行っている。
2014年6月にフランスのパリで開かれた国際武器見本市「ユーロサトリ」で、初代防衛装備庁装備政策部長であり、当時防衛省装備政策課長だった堀地徹氏がイスラエル企業のブースに立ち寄り、「イスラエルが開発する無人攻撃機『ヘロン』に関心がある」と伝え、密談に及んだという。同じ月、安倍晋三首相がイスラエルのネタニヤフ首相と新たな包括的パートナーシップの構築に関する共同声明を発表、防衛協力の重要性を確認し、閣僚級を含む両国の防衛当局間の交流拡大で一致した。