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天皇が「お気持ち」で危惧した“崩御による自粛”の実態とは? 昭和の終わりに起きた恐ろしい状況が平成で再び

 さらにCMの改変も続発した。日産の自動車CMで井上陽水が「みなさーん、お元気ですか?」という音声がカットされたのは有名だが、工藤静香出演のロッテのチョコレートCMでの台詞「その日が来ました」なども差し替えられた。なかには新商品の「誕生」を「新発売」に言い換えるなど、明らかに過剰な対応もあった。

 こうしたテレビの自主規制によって作り上げられた“自粛ムード”は、伝染病のように爆発的に全国に拡散していく。9月末ごろからは日本各地でお祭りやパレード、コンサートなどの各種イベントが相次いで中止となった。当時の報道などからいくつか具体例を挙げてみよう。

・神奈川県横浜市では、秋分の日に予定されていた横浜駅西口の名物行事「ヨコハマカーニバル」が中止。
・千葉県東京ディズニーランドでパレードの後の花火打ち上げが中止。また、ミッキーマウス生誕六十周年を祝うイベント「ミッキー・カー・オブ・ザ・イアー」が延期。ディズニーランド駐車場に一般参加者の車で巨大ミッキーマウスの絵を描く予定だった。
・千葉県印西町で開催予定だった「第一回コスモスサミット」が無期延期。
・長野県で行われる予定だった全国俳句大会(参加者約200人)が中止。
・福島県の会津秋まつりで、約7000人の小中学生が市内を練り歩く「提灯行列」と、3日間続けられる予定だった盆踊り大会が中止。
・静岡県静岡市登呂遺跡で行われる予定だった「第27回登呂祭り」が中止。例年、市民約10万人が参加していた。
・三重県伊勢市の「伊勢おおまつり」と「伊勢神宮奉納花火大会」が中止。
・佐賀県の県民体育大会開会式で、太鼓演奏やファンファーレなどが取りやめ。
・長崎県長崎市の諏訪神社で行われる予定だった秋の大祭「長崎くんち」の奉納踊りが中止。
・プロ野球では、セ・パ両優勝チームのパレードが中止。なおパ・リーグは西武ライオンズが1位に輝いたが、恒例の西武デパート「優勝感謝セール」は行われなかった。

 これはあくまでほんの一部だが、比較的規模の大きなものだけでなく、小規模な催しも次々と中止や延期、内容が変更になった。なかにはこんなものまで?と首を傾げるようなものも見受けられる。

・公開を控えていたオムニバス映画『バカヤロー!私、怒ってます』の宣伝として東京都港区で予定されていた「バカヤロー!言いたい放題コンテスト&試写会」が延期。配給の松竹宣伝部は「タイトルがタイトル。天皇の状態からみてまずいだろうと、思ったので」とコメント。
・特殊法人「住宅・都市整備公団」が予定していた新宿駅前の「ススキと月見だんごの街頭プレゼント」が中止。「新宿でひと足早いお月見気分を」と、ススキと月見だんご計1000セットを無料プレゼントするはずだったという。
・キッコーマンと子会社のマンズワインが開催を予定していた「マンズワイン祭り」「マンジョウまつり」が中止。ともに、ワインやみりんの工場で無料試飲、各種ショーを訪問客に披露する予定だった。なお、通常の工場見学は普段通り受け付けたという。

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