宮内庁「天皇陛下お誕生日に際し(平成25年)」より
いったいこれはどういうことなのか。昨日、 NHKが報じた「天皇が生前退位の意向」。NHKの情報源は「宮内庁関係者」ということだったが、その直後に宮内庁の山本信一郎次長が「そうした事実は一切ない。陛下は憲法上のお立場から、皇室典範や皇室の制度に関する発言は差し控えてこられた」と完全否定した。
さらに、時事通信によると、深夜には、風岡典之宮内庁長官も「(皇室の)制度については国会の判断にゆだねられている。陛下がどうすべきだとおっしゃったことは一度もなく、あり得ない話だ」と否定した。また、菅義偉官房長官もオフレコながら「承知していない」と事実を認めなかった。
では、NHKは何を根拠にこの「生前退位の意向」報道に踏み切ったのか。常識的に考えると、NHKのような官僚的なメディアがこうした重要な情報を宮内庁長官のオーソライズなしに報道するというのはありえない。もしそれができるとしたら、天皇周辺から直接、情報をとっているというケースだろう。
実際、今回のNHKの情報源は、天皇本人にきわめて近いスジではないかといわれている。
「今回、スクープしたのはNHKの宮内庁担当のHという記者なんですが、彼は秋篠宮に食い込んでいる。そんなところから、天皇が秋篠宮を通じて意志を伝えたのではないかといわれています。実際、秋篠宮は数年前、記者会見で「(天皇の)定年制が必要になってくると思います」と述べたことがあり、このときも天皇の意向を代弁したものだといわれました。天皇はこのころからしばしば生前退位の制度を作るよう要望を出されていたのですが、1年前くらいからその意向が非常に強くなったようです」(全国紙宮内庁担当記者)
たしかに、NHKがここまで踏み込んで報道したというのは、それくらい天皇の意志が強いということだろう。実はNHKは参院選を前にこのニュースを出そうとしたものの、官邸からストップがかかって、一旦、報道を断念している。普通ならそれでたち消えになるところを、NHKはもう一回、参院選が終わったタイミングで出してきた。これは、官邸を超える存在、つまり天皇サイドからの絶対的な後押しがあったとしか考えられない。
では、なぜ、天皇は改めて、生前退位の姿勢を強く示したのか。新聞・テレビはたんに「自らの体調を考慮」などと報じているが、そんなことでこの行動は説明できない。なぜなら、現行の皇室典範でも天皇が公務に支障がある場合は、摂政をおくことができるからだ。
実は、宮内庁関係者の間では、今回の「生前退位の意志」報道が、安倍政権の改憲の動きに対し、天皇が身を賭して抵抗の姿勢を示したのではないか、という見方が広がっている。