こうした安倍首相の国民をバカにした振る舞いは、TBSの選挙特番でも同様だった。膳場貴子キャスターからの「この選挙結果をもって憲法改正への民意は示されたとお考えですか?」との質問に対し、安倍首相はこうまくしたてた。
「何をもって改憲勢力と言うのかはわかりませんが、民進党のなかにも憲法改正をする必要性を感じている方もおそらくいらっしゃるんだろうと思います。それは今後、憲法審査会のなかで色んな議論が出てくる。お互いが議論を深めていくなかで、どの条文をどういうふうに変えるかが大切なんであって、憲法改正に対してイエスかノーかというのはもういまの段階ではもうあまり意味がないのかなと思っています」
つまり“改憲はもう決まっていること”“最後は国民投票するんだからつべこべ言うなよ”ということらしい。しかし、何度でも繰り返すが、安倍首相は改憲について街頭演説で一言も触れず、自民党の選挙公約にもいちばん最後にほんの数行しか書いていない。にもかかわらず選挙が終わったとたんに“改憲前提”を主張するのは、完全に詐欺的行為だろう。安倍首相は「イエスかノーか」という段階を、参院選の“争点隠し”で意図的にすっ飛ばしたのである。言うまでもなく、国民のなかには現行憲法のままで十分であって発議自体が必要ないと考えている人は多数いる。安倍首相は、そうした“国民の発言権”を根こそぎ奪いとったのだ。
事実、朝日新聞による今月の世論調査では、〈安倍首相は憲法改正について、「参議院選挙で争点とすることは必ずしも必要がない」と話しています。こうした安倍首相の姿勢について、妥当だと思いますか。妥当ではないと思いますか〉という問いに対し、〈妥当だ〉がわずか28パーセント、〈妥当ではない〉が52パーセントと、半数以上の国民がこの“改憲争点隠し”を疑問視していた。他の最新世論調査でも、憲法を改正するべきでないという答えが改正すべきを上回っているものがほとんどだ。それを安倍首相は「国民投票があるのだから選挙で信を得る必要はない」などと強弁するのだから、開いた口がふさがらない。
そんな安倍首相がもっとも回答に窮したのは、やはり池上彰がキャスターを務めたテレビ東京の選挙特番だった。池上が、安倍首相が街頭演説で一言も改憲について触れなかったことに対し、「今年の年頭の記者会見では参議院選挙で憲法改正を国民に問うとおっしゃっていましたね」と切り込むと、安倍首相はしどろもどろになって、こんな本音をポロリとこぼしたのだ。
「あのー、いわば、それはですね、憲法改正する、あるいは、憲法改正について指一本触れないという主張との違いということについてですね、この3分の2以上の方々が憲法を改正するという考え方が調整をしておかないと、そもそも議論が進んでいかないわけであります」
日本語になっていない“アベ語”の典型のような受け答えだが、しかし、安倍首相は少なくとも国民に知らせないまま、とにかく憲法を改正してもいいという「3分の2以上の方々」をつくるべく「調整」していたことを明かしたのだ。