発端は、昨年の維新の党の“分裂騒動”だ。橋下氏と松井一郎大阪府知事の離脱を皮切りに、維新内の“大阪派”と執行部の対立が激化、結果、橋下氏たちはおおさか維新を立ち上げたわけだが、そのとき、政党交付金を巡って銀行口座を凍結するなど泥沼化したことは記憶に新しい。そして、今回浮上した疑惑も、この政党交付金の“行方”を巡ったものだ。
橋下氏は、この分裂騒動の最中の昨年10月24日、ツイッターでこんなツイートをしていた。
〈維新の党はここまでの事態に陥った以上、いったん解党して政党交付金を国に返すべきだ。他党に回ろうとも今の維新の党が受け取る資格はない。有権者にお詫びして、皆リセットして一から出直し。そして次の選挙で審判を受ける。これしかない。維新の党の永田町組な何を考えているか分からない〉(原文ママ)
実際には、維新の党は解党せず、離脱した大阪系らが橋下氏と新党を結成する形になったわけだが、この時点で、橋下氏は“政党交付金の返還”を明言していたことを覚えておいてほしい。しかも、全額返還するような口ぶりで。おそらく、橋下氏は交付金をめぐる内ゲバで低下した大阪系のイメージを「返還」を強調することで払拭しにかかったのだろう。
しかし、その交付金の扱いの“実態”といえば、クリーンな「返還」とは程遠いものだった。昨年12月、残留組と大阪組は和解の文書で交付金を議員数に応じて配分することで合意し事態の決着をはかったのだが、これを報じた朝日新聞15年12月9日付にはこうある。
〈銀行通帳や印鑑を奪い合う泥仕合となっていた政党交付金の取り扱いについては、これまでの必要経費や、大阪都構想をめぐる大阪市の住民投票の運動経費5億円を精算し、残金を国庫に返納する。ただ、関係者によると、所属する国会議員の数に応じて、1人当たり約1200万円を配分する約束も交わしており、国庫への返納額はわずかとみられる。〉
つまり、経費清算と約束した所属議員への分配を終えると、橋下氏が喧伝していた「返還」分はほとんど残っていなかったのである。
これだけでも詐欺的としか言いようがないが、さらに姑息なのはここからだ。そもそも政党助成法では、交付金を受けていた政党や支部が解散などによって政治団体でなくなった場合、受け取った交付金に対して総務省が返還を命じることになっている。そして、維新の党の分裂騒動では、片山虎之助議員、室井邦彦議員、藤巻健史議員(いずれも参院)ら離党組が代表を務める多数の選挙区支部が解散している。ひらたく言うと、その選挙区支部が受け取った政党交付金を使い切らなかった場合、国庫に返さねばならないのだ。
しかし、現在法務省が公開している前述の離党組3名が代表を務めていた維新の党選挙区支部の政治資金収支報告書を確認してみると、妙なことに、昨年度までの繰越金を含めた収入と、2015年の支出がぴったり差し引き0円になっている。念のため総務省に問い合わせたところ、解散する政治団体の収支を0円にしなければならないような規定はないという。そして、収入欄の政党交付金についての記載を見てみると、揃いも揃って、奇妙としか言いようがない“カネの流れ”が見て取れるのだ。