安倍晋三公式サイトより
「アベノミクスはまだ道半ばだ。ギアをアップして、エンジンをフル回転させる必要がある」
「ロケットが成層圏を脱するには、スピードが必要。我々もそのスピードを獲得して、成層圏から脱出するよう、力強い速度を得ていきたい」
昨日、山梨県のJR甲府駅前を皮切りにして本格的に遊説をスタートさせた安倍首相。もちろん、街頭演説でしつこくアピールしたのは、絵空事の“アベノミクスの効果”。そして冒頭のように、この国にはまるでアベノミクスしか道が残されていないかのごとく観衆を煽ったという。
エンジンだのロケットだのと喩えだけは威勢がいいが、肝心の中身は相変わらずスカスカだ。今月3日に発表した自民党の参院選選挙公約でも〈あらゆる政策を総動員して、戦後最大のGDP600兆円経済を目指します〉とぶち上げたが、〈赤字国債に頼ることなく安定財源を確保〉などと記載しながらも一体どうやって財源を確保するのかという肝心な部分は書かれていない。
消費税の増税延期にはじまり、安倍首相はこうして経済政策を選挙の争点にしようと躍起だが、その一方で隅に追いやっているのが「憲法改正」問題だ。
現に、自民党の選挙公約のパンフレットでは、「経済再生」や「女性活躍」、「地方再生」などは独立して項目を立て、ものによっては何百行も費やして政策を並べているが、「憲法改正」は項目も立てず、触れているのはなんといちばん最後、たったの10行だ。
しかも、その内容は、〈衆議院・参議院の憲法審査会における議論を進め、各党との連携を図り、国民の合意形成に努め、憲法改正を目指します〉というもの。2014年12月に行われた衆院選では〈憲法改正原案を国会に提出し、国民投票を実施〉と言及していたが、すっかりパワーダウンしている。
だが、安倍首相が憲法改正に興味を失ったというわけでは、当然ながら決してない。というよりも、今回の参院選の争点は、経済政策なんかではない。本丸は憲法改正なのだ。
だいたい安倍首相は、前述した14年の総選挙が終わるなり、「憲法改正は自民党の悲願であり、立党以来の目標だ」「憲法改正の必要性を訴えていく」と矢も盾もたまらない様子で宣言。昨年、安保法制を強行採決した後も、早々に参院選で憲法改正を自民党の公約に掲げることを明言し、今年に入ってからも1月の年頭記者会見で「(憲法改正を)参院選でしっかりと訴えていく。国民的な議論を深めていきたい」と息巻いていた。