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戦争映画で日本を加害者に描くと製作資金が集まらない!『野火』の塚本晋也監督と松江哲明監督が語る日本映画の悲惨な現実

 映画のテーマがテーマだけに、『野火』は資金集めの過程で大変難航し、一時期は実写映画としての製作は諦め、アニメ映画としてつくり直そうと考えたほどだったのだが、そのことについて塚本氏はこう振り返る。

「いつもの僕の自主映画の、僕の頭の中にあるちょっと奇天烈なものを映画化するというのとは違って、もう大岡昇平さんという素晴らしい原作があるので、それをたっぷりと描くのには、自分がちゃんとつくると言えば、お金がいつかは集まるんじゃないかという気がしてたんですけど、でも、時間が経つにつれて、まあ、お金だけの理由ではなくて、例えば、『もっと小さい規模でやります』と言っても、だんだんだんだんに、お金が出ない雰囲気というか、風潮みたいなものを感じるようになって、つくりづらくなっているなぁというのはここしばらく感じていた感じですね」

 これがポッと出の映画人なら話は分かるが、そうではなく、これは、今年公開予定のマーティン・スコセッシ監督が映画化する遠藤周作『沈黙』にリーアム・ニーソン、浅野忠信らとともに俳優として名を連ねる、世界的にも評価が高い映画監督・俳優の塚本晋也が体験したエピソードである。

 このような傾向は、映画製作の現場に限ったことではない。前掲「REAR no.36」で、松江氏は映画配給会社にまん延する空気を指摘する。

「日本は加害者になった映画を上映しないんですよね。中国映画の『南京!南京!』(2009年、陸川監督)は未だに上映されていませんし、アンジェリーナ・ジョリーが監督したアメリカの『不屈の男 アンブロークン』(2014年)は公開が危ぶまれていました(2016年2月6日より上映予定)。多分、その原作などの情報だけで日本人がひどいことをしているところを描いているに違いない、みたいなことで上映しないというか、抗議を恐れて自粛っていう…。僕はその雰囲気がすごく怖いんです。やっぱり映画を見る一つの目的って、世界を知る、違うものを知るっていうのがすごく大きいんですよね。外国にもいろいろひどい映画もあるわけですよ。でもそういうものを見るのも、その国を知る事なんですよ」

 各マスメディア、特にテレビが政権の意向を忖度してまともな報道ができなくなっている状況は周知の通りだが、それは映画界においても同じだった。

 しかし、我が国のメディアを取り巻く状況がそんな体たらくである一方、ドイツでは、自らが「戦争加害者」となった過去を映画のなかできちんと向き合い、本当の戦争映画を次々とつくりだしている。たとえば、14年公開(日本公開は15年)の映画『顔のないヒトラーたち』。この映画について、「キネマ旬報」2016年冬の増刊号はこう解説している。

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