では、肝心の「Hanada」創刊号はどういう内容なのか。あるいは、花田氏が抜けた「WiLL」はどうなったのか。
執筆陣を見ると、「WiLL」6月号のほうは曽野綾子に渡部昇一、石原慎太郎、金美玲など保守論壇で定番のメンバー。対する「Hanada」6月号はというと、百田尚樹、藤岡信勝、山際澄夫、青山繁晴など、こちらも保守タカ派系のいつものメンツである。なお、櫻井よしこと西尾幹二にいたっては両誌をカケモチしている。……って結局どっちも同じ“安倍応援団”と歴史修正主義者とヘイト差別主義者が大集合の極右雑誌じゃないか!
まあ、強いて言えば記事の内容は、やはり花田氏の「Hanada」のほうがよりこれまでの「WiLL」っぽい胡散臭さ、もといケレン味が強い気もするが、それも誤差の範囲内(?)である。
つまるところ、こうして両者の主張を見ても、雑誌の内容を見比べても、花田氏退社は誌面の路線対立などではなく、お互いの感情的、そして金銭的対立であったと見るのが妥当だろう。花田氏は鈴木氏が病気を患って以降、鈴木氏の言動がおかしくなり、また “万が一のため経営が分かる人を連れてきてほしい”と何度も言ったことがストレスだったのではと推測する。
しかし、73歳になる花田氏もけっして冷静ではない。それに関して「WiLL」にも連載を持っていたコラムニストの勝谷誠彦氏が、メルマガで花田氏についてこんな話を書いている。
〈何が何だかよくわからないのだが『WiLL』がもともといた版元とケンカしてよそに移るというのである。花田紀凱師匠は「そのまま持っていくので、発行元がかわるだけで何も違わないよ」と言ってきた。しかし、自分の書いたものに責任を持つ身としてはそうはいかない。これまでの版元に電話をして事情を聞いた。そのことを師匠に言うとキレた。「なんであんな奴と話をするんだ。ふざけんな。もういい、やめだ、やめ」ということで連載をやめることにしたのである。〉
鈴木氏と同様、花田氏も感情的になっている様子が分かる。いずれにしても、今回の騒動を見ると、これまでさんざん繰り返されてきた極右陣営のトラブル、醜態が思い起こされる。「新しい歴史教科書をつくる会」、「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会)、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(家族会)、あるいは田母神俊雄容疑者と「日本文化チャンネル桜」を巡る騒動……。これらは、すべて主導権争い、もしくは不透明な金の問題からお互いを罵り、大問題に発展して分裂したものだった。
そして、今度は「WiLL」……。「愛国心はならず者の最後の避難所」というのはサミュエル・ジョンソンの有名な言葉だが、こうした極右陣営の仲間割れを見ていると、今の日本では「愛国心は目立ちたがりと金の亡者の避難所」なのか、とうんざりしてくる。
それはともかく、ワックは現在、問題の表紙の類似性に加え、花田氏の金銭問題についても調査、訴訟を準備しているとも伝えられるので、今後の動向にぜひ注意しておきたい。
(田部祥太)
最終更新:2016.04.28 12:48