しかし、日本の中高年は本当にそんなに不倫しているのだろうか? 計算のもとになっている相模ゴム工業のアンケートの数字がそもそも間違っているのではないか? そんな疑問も浮かんでくる。
だが、また別のアンケートの結果を見ると、この相模ゴム工業が出した数字に信憑性が増してくるのである。全世界で4000万人近くが利用している既婚男女向けの出会い系サイト「アシュレイ・マディソン」が出した数字をもとに門倉氏はこのように綴っている。
〈「アシュレイ・マディソン」が2014年に行った調査によると、「不倫についての罪悪感があるか?」という質問に対して、「ある」と回答した女性の世界平均は8%であったのに対して、日本人女性はわずか2%。男性の場合、世界平均19%に対して、日本人男性は8%。国際的にみて日本の男女は、罪の意識が希薄であることが明らかになった〉
門倉氏はその理由として、欧米と違って日本は宗教的な倫理観を価値判断の基準にしていない人が多いことや、セックスレスの夫婦が44.6%(日本家族協会による14年の調査)にもおよぶことなどをあげているが、理由はなんであれ、日本人が不倫に対して罪の意識が薄く、それにより前述のような大きい不倫ビジネス市場が形成されているというのは、疑いようのない事実として数字が物語っている。
さらに門倉氏は著書のなかで、もうひとつ興味深いデータを記している。不景気になると人間は不倫しやすいというのだ。
英国の既婚者向け出会い系サイト「IllicitEncounters.com」の調査によれば、38万人の会員のうち2万人を占めていた金融関係者が、リーマンショック以降不倫に走るケースが増えたと明かしているのだが、このデータを受けて門倉氏はこのように綴っている。
〈同サイトは、金融関係者の不倫が増えている理由として、金融関係者が公私ともに強いストレスを受けていることを挙げている。仕事の面では、サブプライムローン(低所得層向け住宅融資)の焦げ付き問題で社会的に非難を浴びているし、家においても給料の目減りなどによって夫婦関係が悪化しやすい。このため、公私ともつらい立場におかれて、ストレスが溜まり、精神的な癒しを求めて不倫に走ってしまうのだという。
ちなみに、同サイトが金融関係で働く男女600人以上に不倫に走る理由を聞いたところ、1番の理由として挙げられていたのは「愛されていると感じるため」であった。
不況になると、夫の側だけでなく妻の側も不倫に走りやすくなる。というのも、不況期にはサラリーマンの夫がリストラされたり、リストラされなくても給与が減少するケースが目立って増えるので、それに伴って夫に対する愛情やリスペクトの念が薄れ、他の男性が魅力的に見えてくるからだ〉