『クローズアップ現代』ホームページより
「長い間続けることができたのは、協力いただいた多くのゲストの方々、そして何より番組を見てくださった視聴者のおかげだと感謝しています。本当にありがとうございました」
昨夜、最後の出演となった『クローズアップ現代』(NHK)で国谷裕子キャスターはそう挨拶すると、深々と頭を下げた。『クロ現』は4月4日から『クローズアップ現代+』と改称され、時間帯も22時台へと移る。
ご存じの通り『クロ現』は、昨年3月に「週刊文春」(文藝春秋)が“やらせ問題”を報じ、BPOも「重大な放送倫理違反があった」とした。今回の『クロ現』の改編および国谷キャスターの降板も、“やらせ問題からの再出発”といったように印象付けられているが、もちろんこれは表面上の話でしかない。
本サイトでは繰り返しお伝えしているように、国谷キャスターの降板は、『NEWS23』(TBS)の膳場貴子キャスターと岸井成格・番組アンカー、そして『報道ステーション』(テレビ朝日)の古舘伊知郎キャスターの降板と同様、官邸からの圧力に屈した結果だ。
とくに国谷キャスターは、一昨年の集団的自衛権行使容認の際、番組に出演した菅義偉官房長官に「他国の戦争に巻きこまれるのでは」「憲法を解釈で変えていいのか」と質問を投げかけたが、これに秘書官が激怒。番組終了後、官邸はNHK上層部に対して「君たちは現場のコントロールもできないのか」と猛抗議したという。ようするに、国谷キャスターは官邸からずっと目をつけられており、NHKはやらせ問題を逆に“隠れ蓑”にして降板させたのである。
しかも、そうした問題が起こって以降、『クロ現』の内容は政権に気を遣ったものに変化。昨年可決された安保法制についても7月に一度だけ取り上げ、国谷キャスターは「合憲か違憲かというのは非常に根本的で本質的な問題では」「なぜ成立を急ぐのか」などと問題点を挙げていったが、そのたびにNHK政治部記者が「政府は国民の理解を得るためにも憲法論だけでなく安全保障政策の観点からの議論を深めたいという考えを持っている」といったように政権の主張を代弁しつづけた。
また、今年2月には、まさにいま話題の保育所などで非正規化が進んでいる実態を放送したが、当初、番組タイトルとして発表されていたのは「拡大する“官製ワーキングプア”」だったのに、当日の放送では「広がる“労働崩壊”~公共サービスの担い手に何が~」というタイトルに変更されていた。これもまた、政権批判だと受け取られないようにと忖度した結果だったのではないかと見られている。