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『牡蠣工場』公開直前インタビュー

想田和弘監督が安倍政権を斬る!「安倍さんは民主主義をやめようとしている」「アベノミクスはただの筋肉増強剤」

──ご家族や親戚から工場を継げとは言われなかったんですか? 家業なら間接的にでもそういう雰囲気はあったでしょう。

想田 それがね、親父も周囲も、そんなこと一言も言わないんですよ。それはなんでだろう?と考えたとき、気がついたんです。もしかすると、僕らって、幼いころからずっとひとつのメッセージを受け取り続けてきたんじゃないか。それは「勉強しなさい。いい学校に行きなさい。ホワイトカラーになりなさい」という社会からのメッセージだったんじゃないか。逆にいえば、「第一次産業、第二次産業にいくと辛いですよ」ということでもある。僕は子どものころから、農業や漁業を目指しなさいとか、縫製の工場で働きなさいとか、そういうことをほとんど言われてきていない。それは多分、僕の家庭だけの話じゃなくて、社会に蔓延する歪んだ価値観なんだと思います。もしかして、親父が僕に継げと言わなかったのは、そういう価値観を親父も内面化しているからなんじゃないか。自分で縫製業をやりながらね。

──どうしてでしょうか?

想田 たぶん、これは文明の病なんですよ。アメリカでもそうだし、あるいは発展途上国なんかはもっと露骨になる。「貧困から抜け出すためには農業をがんばりなさい」って聞かないでしょ? むしろ「貧困から抜け出すためには学校へ行きなさい」というメッセージになる。「第一次産業や第二次産業はお金が儲からず、したがって社会的ステータスも低いので、そこから抜け出しなさい」というメッセージ。だからこそ、牡蠣工場にも親父の会社にも後継者がいないし、人手不足なわけです。たとえば「冬季に牡蠣を剥けば年間一千万円を保証します」と募集すれば人手だって集まると思うんです。でも、そんなに人件費をかけてしまったら、スーパーでは確実に牡蠣の値段があがる。すると消費者は買わない。それで、値段を抑えておくために安く働いてくれる人を外国から呼び寄せないといけなくなるし、同時に日本人の人たちの給料も上がらない。だからこそ人が集まらなくなるという悪循環。ということは、「誰が搾取しているのか?」という問題を究極的に考えると、実はそれは、私たち消費者なんじゃないか。僕たちが少しでも安いものを買いたいと思うことで、広く薄く、少しずつ括弧つきの「搾取」をしていることになる。これは根深い。安いものを買おうとするのは、僕は当然のことだと思うし、非難すべきことでもないから。しかし、結果的にそのしわ寄せが働く人にいっている。しかも、なぜ安いものを買おうとするかというと、きっとその人たちも安い賃金で働かされているからでしょう。下手をすると、ノーチョイス。この世に生まれるだけで、そういう構造に絡め取られれてしまうというカラクリに、僕はこの映画を作ったことで気づかされてしまったんですね。

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