しかも、笑ってしまったのが、この会見で呼びかけ人たちが、何度も「政治との連動性はまったくない」「公権力とは関係を一切もたない運動」などと主張していたことだ。彼らの活動を“政府と連動した報道圧力”と指摘した本サイト記事を意識してか、小川氏は「(この活動が政治介入を招くという意見は)笑止千万」と一蹴し、「非力な一国民として」声をあげたのだと繰り返し強調したのである。
よくもまあ、ぬけぬけとこんなことが言えるものだ。いったい、彼らは自分たちが今までどんな活動をしてきたか、忘れてしまったのだろうか。政治的に「偏って」いるのは、それこそ「視聴者の会」呼びかけ人たちのほうではないか。
まず、代表呼びかけ人のすぎやま氏は、「安倍総理を求める民間人有志の会」の発起人を務めた人物で、「新しい歴史教科書をつくる会」が内部分裂した後に立ち上げられた「教科書改善の会」にも参加。昨年の衆院解散の際には、集団的自衛権の行使容認を閣議決定した安倍首相を“勇者”と表現し、「勇者が国を思い踏み切った解散」と絶賛する一方、あるときは〈日本国内が「日本軍vs反日軍の内戦状態」にある〉と言い出したりと、ネトウヨと見紛う発言を連発している。
代表がこの有り様なのだから、他の呼びかけ人もお察しの通り。渡部昇一氏と渡辺利夫氏は狂信的な極右発言を連発しつつ、安倍首相をべた褒めしてきた保守論壇人だし、ケント・ギルバート氏は今年、あの“ネトウヨ文化人の登竜門”であるアパ懸賞論文で最優秀賞を受賞。安保法制が可決された後には「安倍首相と与党、国会に『おめでとう』と言いたい」と語った御仁だ。
また、経済評論家の上念司氏は本サイトでもお伝えしたようにSEALDsメンバーの個人情報や、安保法制に反対していた一般女性を痴漢冤罪の犯人だというデマを拡散するなど、卑劣な“安保反対派攻撃”をSNS 上で繰り広げてきた人物。そして、経済界から唯一呼びかけ人となっているイエローハット創業者の鍵山秀三郎氏は、沖縄の基地運動で住民がフェンスに反対の意志表示を行ってきたものを「清掃」と称して撤去するなどの活動を行っており、安倍首相もかかわる保守組織「日本教育再生機構」の顧問も務めている。
また、この11月10日、極右組織・日本会議が中心になって改憲イベント「今こそ憲法改正を!武道館1万人大会」が開催されたが、実は「視聴者の会」呼びかけ人7名のうち4名がこの日本会議のイベントの代表発起人に名を連ね、ギルバート氏にいたっては、同大会で講演を行って大喝采を浴びているのだ。
さらに、ポイントなのは、この「視聴者の会」の事務局長に、あの小川榮太郎氏が就任していることだ。「視聴者の会」の意見広告には、「偏向報道」の根拠として、各局の報道番組における「安保法制両論放送時間比較」というデータが掲載されているのだが、このデータを提供したのも小川氏が10月に立ち上げ、代表理事を務めている「一般社団法人日本平和学研究所」なる団体だ。
つまり「視聴者の会」は事実上、小川榮太郎氏が取り仕切っていると言っていい状態なのだが、この小川氏、安倍晋三総理復活のきっかけをつくったあの『約束の日 安倍晋三試論』(幻冬舎)の著者なのである。
いや、たんにヨイショ本を出版しただけではない。たとえば、小川氏は「創誠天志塾」なる私塾を開いているが、自身のブログでこの塾を安倍首相復活のための団体と明言している。