BPO意見書と同様、是枝氏の“私見”は非常に真っ当な見識だ。第三者機関としての役割を果たそうとするBPOの今回の意見書は全面的に支持したいが、問題は、政権側が今後“BPO潰し”を本格化させる可能性が強まったことだろう。
というのも、今年4月、自民党の川崎二郎・情報通信戦略調査会会長は、「テレビ局がお金を出し合う機関できちんとチェックできないなら、独立した機関の方がいい。BPOがお手盛りと言われるなら、少し変えなければならないのかなという思いはある」と発言。自民党はBPOに政府が関与する仕組みにしようと検討する方針を固めたのだ。つまり、政府が個々の番組に口を挟める体制をつくってしまおう、と画策しているわけである。今回、BPOが政権に対して「圧力そのもの」と批判したことで、この動きがさらに強まることは必至だ。
もしもBPOが政府機関になれば、お手盛りどころか、放送の自由は完全に失われることになる。戦後に放送を開始したテレビは戦争協力を経験していないメディアだったが、テレビが言論弾圧に加担する日は、そう遠くないのかもしれない。
(水井多賀子)
最終更新:2016.06.19 02:24