「もともと安倍首相と籾井会長の間で、NHKの受信料義務化で事実上国営化しようというもくろみがあったのは間違いないでしょう。ただ、今年初めまではここまで具体的な話ではなかった。それが急に動き始めたのは、やはり安保法制の報道への不満が背景にあるんじゃないでしょうか。テレビ、とくにNHKの報道は今回、政権にかなり配慮していましたが、自民党は安保反対デモを大きく取り上げたことが許せなかったらしい。党内では『デモを報道するなんてけしからん』『国民の反対が広がったのはテレビ報道をのせいだ』という声が上がり、夏くらいから情報通信戦略調査会を中心に、またぞろテレビへの支配強化を検討し始めていましたから」(全国紙政治部記者)
実際、今回の提言をした小委員会が属す自民党の「情報通信戦略調査会」は、『クローズアップ現代』のやらせ問題と『報道ステーション』の古賀茂明発言をめぐって、NHKとテレビ朝日を呼びつけるなど、一貫してテレビ局への政治介入を画策してきた自民党の尖兵的存在。
今回、民放にもローカル局の再編を提言して、揺さぶりをかけているうえ、「放送法の改正に関する小委員会」の佐藤勉委員長は、テレビの安保法制報道を問題にして、「公平・公正・中立は壊れた。放送法も改正したほうがいい」と、露骨な恫喝発言をしている。
つまり、こうしたテレビへの介入強化、報道の自由制限の一環としてNHKの受信料義務化、事実上の国営化が打ち出されたというわけだ。
周知のように、戦前の日本では、それまであった三つの放送局が政府命令で解散させられ、NHKの前身団体である社団法人「日本放送協会」が設立。この準国営放送が国策宣伝機関として、終戦まで戦争世論を煽り続けた。
自民党とNHKはまさにその歴史を繰り返そうとしているということなのだろうか。
(小杉みすず)
最終更新:2015.10.20 08:21