佐々氏には3人の子供がいるが、父親としても「欠陥だらけ」だったようだ。たとえば、幼い息子3人が朝食時にワイワイ騒いでいると、朝寝をしていた佐々氏は突然起き上がり、お前たちは贅沢だと食パン1枚とコップ1杯を分けて1日を生きろと言い出したこともあったという。
「夫は『怒りじゃない、教育だ』と言うけれど、要するに朝寝を邪魔されて腹を立てているだけ。でも私が『3人で食パン1枚なんて無理です』と子どもをかばったら、火に油を注ぐようなもの。頼りない母親だったと申し訳なく思っています」
その結果、息子たちは佐々氏を疎んじ、独立して家を出た後は、めったに会うこともなくなったという。
そんな佐々氏だが、数年前、持病の心臓病に加え、脊柱管狭窄症と糖尿病を発症し歩行が不自由になった。家の中での移動も幸子さんの助けが必要となった佐々氏の介護は当時70歳だった幸子さんにとっては相当の激務だ。しかも、幸子さんは佐々氏の個人事務所社長でもあり、仕事のサポートもやらなくてはならない。介護と仕事のサポートで心身が疲弊した幸子さんは昔感染したC型肝炎の症状が悪化してしまったという。そこに追い打ちをかけるような事態が幸子さんを襲った。
「さらにちょうどその頃、夫による私への“非常に思いやりのない行為”が明らかになりました。今までも彼の“ビョーキ”や“ご趣味”はさんざん我慢してきたけれど、また裏切られた。仕事でも介護でも、私はこんなに頑張ってるのに、なぜ……と、ひどくがっくりきてしまったのです」
その裏切り行為が何であるかは語ってはいないが、どうやら佐々氏の女性関係らしい。幸子さんは家を出ることを決意するが、しかし佐々氏は自分がホームに行き、妻は家で静養してほしいと提案したという。ところが、それは妻を慮ってのことではなかった。
「頭の中がまるっきり封建時代なものだから、『一国一城の主が城を明け渡すなどもってのほか』(略)。家を手放すなんてありえないのです」
ようするに自分がホームに行く代わりに妻に家に残ってそれを守れ、というものだった。