その後、札幌市でも6日に発行された住民票をめぐる同種のトラブルが起きていることも明らかになっている。要するに、大臣会見の13日までに各地でマイナンバーをめぐる問題が次々と起きているのに、担当大臣ときたら、セキュリティ対策が「終了しました」などと国民を愚弄するかのようなことを平然と言いのけていたわけである。
実は、問題はこんなレベルにとどまらない。高市氏や総務官僚たちは、より重大な事実を隠蔽している疑いがあるのだ。
あの日本年金機構から100万人を超える個人情報の流出事件が起きた6月、焦った総務省は全国の都道府県と全ての市区町村合わせて1789自治体に対し、ひそかに緊急調査を始めていたという。
そして8月時点で集計したところ、個人情報を管理するコンピューターシステムからインターネットを完全分離している自治体は全体のわずか1割にも満たないという深刻な結果を把握していた。つまり、9割以上の自治体システムには、ハッカーが侵入できる「穴」が開いたままだったのだ。
これを裏付ける事実も報道されている。100自治体に対して、中国をはじめ世界各地のハッカーたちがサイバー攻撃を仕掛けていたことが共同通信の全国調査で9月下旬に明るみに出たのだ。
被害は甚大だった。公式ホームページ600ページを全て改ざんされた自治体もあれば、国際的ハッカー集団によって住民のメールアドレスを漏えいされ、名指しの犯行声明をネット上で公開されるという驚愕するような被害も出ており、自治体のコンピューターシステムからマイナンバーが大量漏えいする日が現実味を帯びているのだ。
これほど事態は深刻なのに、高市氏の発言とは裏腹に、国はまともな対策をとっていないという。総務省担当の記者が怒りを込めて言う。
「財政が厳しく、専門的な知識のある職員もいない小規模な町役場や村役場からは、悲鳴が上がっています。総務省は来年度の当初予算で対策費を手当すると言っていますが、カネが出るのは来年4月以降のこと。マイナンバー制度は来年1月には本格運用しちゃうのに、そのずっと後に対策費を出すなんて、セキュリティ対策をなめているとしかいえません。
全国の市区町村のうち60パーセントがセキュリティ対策に不安を感じているという報道も出ていました。とても担当大臣が声高に喜んでいられる状況ではないんです」
まともな対策を講じることなく、口先だけのセキュリティ対策をうたう高市大臣。そして、この大臣を先の内閣改造で更迭せず、続投させてしまった安倍晋三首相にしっぺ返しがくるのも時間の問題だろう。
(小和田三郎)
最終更新:2015.10.17 07:32