姶良カルデラの噴火の可能性が指摘されているのは地震考古学的な観点からだけではない。桜島噴火を予見していた前出の井口教授は桜島単体だけではなく姶良カルデラについてもGPSを使った地殻変動の状況を調べ続けてきた。「桜島昭和火口噴火開始以降のGPS観測 ─2012年~2013年─」という論文には、こう書いている。
〈桜島および姶良カルデラ周辺の地盤は長期的な膨張が継続している.2010年11月から2012年11月までの間の繰り返し観測からは,姶良カルデラ中央部を中心とする等方放射状の膨張が検出され,球状圧力源は深さ7kmに得られた.この膨張は2011年10月~2012年2月にかけて膨張率が大きかった.また,2013 年1月~6月にかけても膨張が観測されている〉
姶良カルデラ自体のマグマが増加しており、その姶良カルデラ自体のマグマから一部が桜島に流れ込んでいるのだ。これは火山学では当たり前の見解で、鹿児島大学の井村隆介准教授は、姶良カルデラには既に巨大噴火を起こすだけのマグマを蓄積している可能性があると指摘している。
もうひとつ、気になるのがいわゆる「たぎり」と呼ばれる現象だ。鹿児島市桜島の北の端にある二俣港で、海面にぶくぶくと湧き出す気泡が、火山性地震が急増した15日以降、住民によって確認されているが、これは海底から火山性ガスが湧き上がっていると見られている。鹿児島地方気象台は「火山活動との関連性は分からない」としているが、無視できない事態だ。
この付近では以前も「たぎり」現象は見られていたのだが、それは桜島から離れた場所だった。今回のような桜島近辺の 「たぎり」は前例がなく、住民の一部は姶良カルデラに異変が起きているのではないか、と心配している。
いずれにしても、現在の桜島の状況は、実は姶良カルデラの巨大噴火の恐れを無視できるような状況ではない。数万年に一度の話を大げさにするなと言うが、11年の東日本大震災は数万年に一度あるかないかの巨大地震だった。そしてその稀な巨大地震以降、日本全体の地殻変動が起きていると多くの地震学者は見ている。
実際、一部のマスコミはこの桜島の噴火活動以降、川内原発への影響を注視。原子力規制委員会に対しても質問を投げかけている。だが、驚いたことに原子力規制委員会の田中俊一委員長は噴火前と全く同じ、木で鼻をくくったような対応に終始しているのだ。
原子力規制委員会のHPに、8月19日の田中委員長会見が掲載されている。少し長くなるが、全文掲載するので読んでいただきたい。