さらに、山本は、もし弾道ミサイルが川内原発に撃ち込まれたとき「防災計画作成の必要性は最大で何キロメートル圏の自治体に及ぶと想定していますか?」と質問を出していたというが、これに対する回答がなかったと言う。もしもの場合、どの範囲で避難をするか、もちろん考えられていなければいけない問題だが、大庭誠司・内閣官房内閣審議官の回答は、「事態の推移に応じて避難の範囲を決定する」というもの。“起こってから考える”と言っているのだ。この答えに、山本の怒りは頂点に達する。
「要は一度、被曝していただくという話ですよ。実測値で計っていくしかないっていう話ですよ。こんないい加減な話あるかよ」
北朝鮮や中国の脅威を叫ぶばかりで、もっとも標的になると思われる原発に関しては何の検討も行っていない。津波であれだけの被害を出したのだから、弾道ミサイルだったらどれほどの被害になるか、そんなことは小学生でもわかる。そればかりか、国民に何かがあっても被曝してから考えると政府は言っているのだ。
ようするに、安倍首相は「国民の生命を守るため安保法制は必要」と言いながら、国民の生命のことなど何も考えていないのだ。集団的自衛権も実際は「日本人にも命をかけさせてアメリカと対等になりたい」、そして「中国をやっつけたい」という危険な欲望に突き動かされた結果にすぎない。
今回、山本の質問と追及はその安倍の本質を見事に暴き出した。事実、山本のほとんどの質問に、安倍首相はまともに答えることが出来ず、肝心のところはすべて田中委員長や大庭審議官に押し付けた。
ただ、こうした山本の主張をまともに取り上げ、安倍首相を追及しようというメディアはほとんどないだろう。これまで、山本がどんな本質的な問題を突きつけても、永田町にいる「政治の専門家」と称する連中はまともに相手にしようとせず、「どうせ山本太郎だから」と冷笑を浴びせかけてきた。
実際、今回もNHK『ニュースウオッチ9』をはじめ、ほとんどのニュースはこの山本議員と安倍首相のやりとりを一切無視した。比較的、安保法制の報道に力を入れている『報道ステーション』(テレビ朝日系)や『NEWS23』(TBS系)でさえ、である。
だが、メディアは山本のことをトンデモ扱いして無視する前に、もう一度、「国民の生命を守るため」と戦争法案をゴリ推ししながら、原発がミサイルの標的になるケースは一切考えていない首相のことを考えたほうがいい。トンデモなのは、明らかにこっちのほうなのである。
(水井多賀子)
最終更新:2015.07.30 08:58