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大卒の正社員、安定志向、祖父が自民党好きなだけ…ネトウヨ・レイシストの意外な素顔

『日本型排外主義 在特会・外国人参政権・東アジア地政学』(名古屋大学出版会)

 本サイトでも様々なかたちで何度も取り上げている「ヘイトスピーチ」。今の日本で「ヘイトスピーチ」や「排外主義」といった言葉を聞くとき、それが在日コリアン(や時に中国人)に向けられて放たれるものであることがほとんどである。ヨーロッパなどで「排外主義」や「ゼノフォビア(外国人恐怖症)」と言うときには、特に移民排斥を訴える場合が多い。増える移民のせいで仕事が奪われることへの恐怖から排外主義に向かうわけであり、フランスやギリシャなどでは移民排斥を掲げる政党が躍進している事実もある。

 しかしながら昔から日本に住む(住まざるをえなかった)在日コリアンたちに対して、いまさら「出て行け」と叫ぶ日本のレイシスト、排外主義者やネトウヨたちは、彼らのせいで雇用が圧迫されていると本気で信じているわけでもなさそうで、よく言われるように、単なる弱いものいじめが具現化されたものが、日本のヘイトスピーチだという考察は理にかなっている。

 では、なぜ日本の排外主義者たちは弱いものいじめをするのか、その排外主義にいたる過程は何なのか、ひいては排外主義者は誰なのかを考えてみる。「ネトウヨ」や「排外主義者」のイメージは、これまで多くのメディアが扱ってきたように、「日本の長期不況による格差の拡大の被害者で、非正規雇用で経済的、精神的に追い詰められた“底辺”の人々」のようなプロファイリングが一人歩きしている感は否めないのだが、果たして実際にヘイトデモに参加したり在特会の会員になったりしているのは、本当にそういったイメージ通りの人々なのだろうか。

 日本の排外主義について、その当事者への直接のヒアリングと、外国での排外主義の様々な研究から取り上げた、『日本型排外主義 在特会・外国人参政権・東アジア地政学』(樋口直人/名古屋大学出版会)は、そのこれまで普及したイメージを別の側面から見ることに役立つ一冊である。

 本書では排外主義運動を行う人たち34人への直接のヒアリングや、右派論壇での歴史認識や「ターゲット」となる国やトピックの登場頻度などのデータを通して、排外主義運動への誘引の過程や、これまであまり言及されることのなかった排外主義者たちのイデオロギー的側面を明らかにしていく。

 まず、ヒアリングをした34人の「排外主義活動家」の背景を見ると、学歴では大卒/中退が24人、雇用形態では正規雇用が30人と、「非正規雇用の」というレッテルはここには当てはまらないことがわかる。また右派論壇での言論の機会構造という点では、排外主義運動は「目的がない非合理的な鬱憤晴らしとみるよりは」、外国人参政権や朝鮮総連バッシングなどの盛り上がりに「反応する機会主義的な行為者」であると著者は指摘する。

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