まるで社会主義国家とは思えない状況となっている北朝鮮なのだが、ついには世界遺産の盗難事件まで発生している。
事件があったのは、2013年にユネスコの世界文化遺産に登録された「開城歴史遺跡地区」の一部である「明陵(ミョンルン)郡」。世界遺産登録前の2007年5月のことだ。検察文書にはこう記されていた。
「明陵洞地区の国家保存遺跡第549号として登録された高麗第29代忠穆王の王陵から、虎の石像3点が消えた。(中略)重さが百数十キロにも及ぶ彫刻が一晩の間になくなったところをみると、一人や二人の犯行とは考えられず、さらに運送機材を利用した可能性が高いのは間違いなかった」
この事件に関与していたのは、農場作業員と無職者と主婦の3人と、中朝国境の街・新義州からきた商売人の4人。また、軍部隊ナンバーをつけた車も目撃されており、ほぼ確実に軍関係者が関与していたという。
ちなみに、この石像は中国で骨董品として売りさばく予定だったというが、ある軍部隊基地の庭に埋めて隠していたところを捜査チームに発見され、回収されている。
放射性物質から文化遺産まで、様々なものが換金目的で盗み出されてしまう北朝鮮。そのうえ覚醒剤が蔓延しているというのだから、少なくとも朝鮮労働党の統制が行き届いているとは思えない状況だ。国民は政府に洗脳され、金正恩総書記の意思のもとに動いている──そんな北朝鮮のイメージはもしかすると、大きな間違いなのかもしれない。
(田中ヒロナ)
最終更新:2018.10.18 04:58