NHKの「やらせ」問題について2日の参議院予算委員会で答弁する籾井会長(YouTube「FNNnewsCH」より)
「週刊文春」(文藝春秋)が報じた『クローズアップ現代』のやらせ問題、籾井勝人会長が秘書室を通じて私的に使ったハイヤー代の経理処理問題など、NHK関連の不祥事が次から次へと露呈している。この3月の国会での2015年度NHK予算審議は大荒れ。3月25日に行われた衆議院総務委員会では、承認を不服とする野党議員が委員長に詰め寄る中で強行採決が行われ、31日の参議院総務委員会では、反対賛成が同数となり、委員長決裁でなんとか承認されるという混乱ぶりだった。国会でのNHK予算審議は「全会一致」が慣例とされているが、結果、2年続けて「全会不一致」という異常事態となった。
昨年と同様、今年も審議のほとんどは、籾井勝人氏に対し公共放送会長の資質を問う質疑応答で占められた。「会長は放送法をご存じなのか?」と、本来公共放送の会長には基本中の基本であるはずの質問が、代わる代わる野党議員から問いかけられる。そのたび籾井氏は手元のシートを読み上げ「フヘンフトー、ナンビトニモカンショウサレナイ~ジリツシタホウソウガ~」とロボットのように繰り返す。「放送法は大事なので全職員にも暗記するよう伝えている」と得意げに言い放った直後に第1条と3条を言い間違えるなどのうかつさも相変わらずで、結局、全10時間にわたる衆参の予算審議を、茶番劇でほぼ使いきってしまった印象だ。
「もう政府関係者もうんざりしているのではないでしょうか。NHKの予算は、公共放送であるNHKが国から独立した形で視聴者から集めた受信料です。それを視聴者・国民の代表である国会で審議し、与野党一致の承認を受けるというのが本来のあり方。与党による強行採決など前代未聞です。可否同数というのは、過半数の議員の賛成を得られなかったのですから本来は否決と同じです。委員長決裁というのもNHK予算については相応しくないあり方です。これ以上、籾井氏が会長の座に居座ることは許されないと思いますね」
そうはっきり言い切るのは、昨年度までNHK経営委員長代行を務め、この春で委員3年の任期を終えて退任したばかりの上村達男早稲田大学教授だ。氏は、昨年の籾井会長就任直後から、経営委員として舌鋒鋭く籾井氏の会長としての資質を問い、内部から批判し続けた数少ないひとりだ。