まず、たかじんとさくら夫人が出会った経緯からして、『殉愛』の記述とK氏の話は大きく食い違う。『殉愛』では、さくら夫人がフェイスブックに犬の写真を載せていたところ、“家鋪隆仁”という見知らぬ男性から「可愛い犬ですね」というコメントが届き、やりとりをするなかでオフ会に参加しないかと誘われた──という流れになっている。ところが、K氏はふたりの出会いをこう語っていた。
「彼女(さくら氏)とは、フェイスブックで知り合って、彼女の方から、猛アタックがあったと師匠(たかじん)に聞きました。師匠が(フェイスブックで)顔写真を載せない人は承認しませんとメールを送ったら、載せたものがきた。むかし好きやった女性に似ていたので、付き合いを始めたということを教えてくれたことがあります」
また、2012年1月末にたかじんが東京の山王病院で食道ガンだと判明したとき、『殉愛』ではたかじんとさくら夫人の電話のやりとりしか記載されていないが、実際は〈たかじんが付き合っていた東京の女性も付き添って〉いたという。そして『殉愛』では、大阪の自宅マンションに戻ったたかじんがさくら夫人を前にしてK氏に「さくらちゃんを秘書にするから、名刺を作れ」と言っているのだが、K氏の証言では、たかじんはこの席でこう話したのだという。
「これからガン撲滅を、俺とお前とこの子(さくら氏)の3人でやってもらおうと思てるねん」
『殉愛』では終始、K氏は無能でたかじんを貶めるような行動ばかりとる人物として描かれているが、この「ガン撲滅チーム」発言が事実なら、たかじんはK氏を信頼していたことがよくわかる。逆にいえば、このたかじんの発言が『殉愛』に出てこないのは、何か不都合があるからだろう。
しかも、『殉愛』では、13年4月30日にたかじんのガンの再発をさくら夫人とK氏のふたりが医師から告げられ、「半年から、よくて来年の夏」と余命宣告を受ける場面があるが、K氏によれば〈医師から、ガンが再発したことは聞いたが、余命については言われた記憶はない〉という。しかも、たかじんの長女が医師に確認したところ、医師がさくら夫人に余命を告げたのは夏ごろだったそうで、この点も『殉愛』とは食い違う。
他にも、K氏がたかじんから病院を探すようにいわれたのに冷たく断ったこと、たかじんのがん再発後、K氏とU氏が勝手に番組名からたかじんの看板を外すように各テレビ局担当者に通達したこと、さくら夫人にたかじんの事務所P.I.Sが所有するマンションからの退出を迫ったこと……K氏によれば、これらもまったく事実でないという。