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大河に『花燃ゆ』ごり押し? 安倍首相が愛する「長州藩」はテロリスト集団だった!

 繰り返すが、このブチギレ長州の精神的指導者としてもてはやされているのが吉田松陰なのだ。学問に秀で、好奇心旺盛、さらに知行合一であったがゆえに、安政の大獄で処刑された“悲劇の主人公”。これが一般の松陰像であると思うが、著者に言わせれば、これも「大ウソ」なのだという。

「ひと言でいえば、松陰とは単なる、乱暴者の多い長州人の中でも特に過激な若者の一人に過ぎない。若造といえばいいだろうか。今風にいえば、東京から遠く離れた地方都市の悪ガキといったところで、何度注意しても暴走族を止めないのでしょっ引かれただけの男である」
「長州藩自身がこの男にはほとほと手を焼き、ついに士籍を剥奪、家禄を没収している。つまり、武士の資格がないとみられたはみ出し者であった」。

 現在の松陰像は、明治になって「長州閥の元凶にして日本軍閥の祖」である山縣有朋などがでっちあげた虚像だと著者はいう。

 しかも、あの名高い松下村塾は「師が何かを講義して教育するという場ではなく、よくいって仲間が集まって談論風発、『尊皇攘夷』論で大いに盛り上がるという場であった」らしい。

 ちょっと長州ディスがすぎる感じもしなくもないが、しかし、今、常識になっている長州=近代化の礎論は、勝った側がつくりだした歴史であることは間違いない。「歴史は勝者が決める」というが、おそらく、最終的に幕府と薩摩が手を結び、長州が敗れていれば、長州は後世までテロリスト扱いされ続けた可能性はあるだろう。

 だが、結局、長州は勝って官軍となり、明治政府の要職をしめた。そして、以降も政府や陸軍の実権を握り続けた。

 そう考えると、たしかにこの長州のDNAは、安倍首相をはじめとするその末裔(を自負する者)に受け継がれているといってもいいかもしれない。彼らはそろいもそろって「維新」という言葉を好み、ナショナリズムで荒くれ者たちを鼓舞し、歴史を自分たちの都合のいいように書き換え、「積極的平和主義」という言葉で戦争を始めようとしている。それは、「尊王攘夷」という言葉で権力を奪取し、「近代化」の名目で日本を帝国主義的侵略戦争に駆り立てていった長州、明治政府とそっくりではないか。

 安倍首相は著書『美しい国へ』(文春新書)で、政治家としての志について、こう書いている。

〈「自ら反(かえり)みて縮(なお)くんば千万人といえども吾ゆかん」──わたしの郷土である長州が生んだ秀才、吉田松陰先生が好んで使った孟子の言葉である。自分なりに熟慮した結果、自分が間違っていないという信念を抱いたら、断固として前進すべし、という意味である。〉

 いやいや、後生だから、あらぬ方向に勝手に進まないでくださいよ!
(宮島みつや)

最終更新:2018.10.18 05:13

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