「やはり、好きだったのもありますし、長く一緒にいて、生活してきて、結婚を意識していました。朝起きて、田中さんが起きる前に、お風呂を入れて、起きたらコーヒーを淹れて……って、日々の生活リズム、できてたので、結婚って意識が出てきたので、ためらいはなかったです。避妊せずに、ってこと、受け入れたいな、と。
田中さんの性格的に、厳しい人だし、あまり人を信用しない中で、一緒に過ごせてて、家族の話をしてくれたり、お互いくだらないことを言い合ったり……(泣き始める)。日々の生活の中で、結婚を…。そういう、普段人には見せないところ、そういうのからも、私に対して、少しは考えてくれているのかな、と感じていました」
女性は妊娠した。それを電話で報告すると田中氏は「いまから出張があるから、また電話する」とあっさりとした反応。出張から戻り話し合いをしたが、
「妊娠した、って話して病院からもらった写真を見せたり……。でも田中さんは喜んでくれてないです。『誰のためにもならない』と。意味が分からなかったです。なので、どうして?っていうのを聞いても、納得できる回答はなく、ずっと『誰のためにもならない』としか言ってくれなかった」
その後もメールや対面で話し合いを続けるが、田中氏は、30万円を女性の住む部屋の前に置いていった。
代理人「メールや話で、これは何のお金と言われました?」
女性「堕胎の金だ、と……」
女性はその後堕胎した。田中氏と女性のサインのある同意書が、証拠として提出されている。また女性は話し合いの中で「2億円払って」と要求したともいう。田中氏からの当時のメールにはこうある。
「自分としてはすでに最低限のお金を渡した上で、何億円も要求されるのは、はっきり言って恐喝にも近い」
女性はこう弁護する。
女性「田中さんに……もういちど、産んでいい、って考えを変えてほしくて……」
代理人「気持ちが変わらなくて、悲しくて、困らせたい気持ちもあったんじゃ?」
女性「はい……。やっぱり田中さんは私の体を気遣ってくれる言葉もなく、淡々と、ちょっと冷たいメールを送ってきたりして、怒りが日増しに……」
代理人「本当に2億取れると思ってた?」
女性「いえ……」
2人は『結婚』という二文字を実際に言葉に出して語り合ったことはないという。また女性は交際時「半同棲だった」というが、田中氏は書面において「善意で一時的に部屋を貸していただけ。訪問はしていたが、半同棲ではない」と素っ気ない。
ここまでは原告である女性の代理人からの質問だったが、被告である田中氏の代理人からは、女性の生活状況などについてたたみかけるように質問が行われた。