画像は、左から「山谷えり子」「高市早苗」「有村治子」「稲田朋美」各公式HPより
先日発表された、第二次安倍改造内閣。安倍首相は自らが掲げた「女性の活用」をアピールするために、過去最多となる5名の女性閣僚を誕生させた。党三役の政調会長を加えれば、6名。新聞・テレビはさっそく「女性閣僚過去最多」「内閣も女性活用へ」と大はしゃぎを繰り広げている。
しかし、マスコミはこの女性閣僚たちの顔ぶれをちゃんと見てそんなことをいっているのだろうのか。6名のうち、高市早苗総務相、山谷えり子拉致問題担当相、有村治子女性活躍担当相、そして稲田朋美自民党政調会長は、自民党の中でも保守派中の保守派、ネトウヨの間で“アイドル”扱いされている極右4人組ではないか。
いや、極右といっても改憲や軍備増強、国民の人権制限を主張し、先の戦争や従軍慰安婦を肯定しているというだけなら、彼女たちだけでなく、安倍政権全体の傾向なので、ここで改めて詳述するつもりはない(それ自体も大きな問題ではあるが)。この人選がとんでもないのは、彼女たちが「女性の活用」の象徴として登用されたにもかかわらず、逆に4人とも女性の権利や自立、社会進出を阻む思想の持ち主だということだ。彼女たちが過去にどんな「反女性」的トンデモ発言をしてきたか、ざっと紹介しよう。
■「性教育は結婚後に!」山谷えり子の頭の中にはちょうちょが飛んでいる?
まず真っ先にあげなければならないのが、拉致問題担当相に就任した山谷えり子だ。山谷は2007年、教育再生担当として内閣総理大臣補佐官を務めていた際、「親学に関する緊急提言」を出そうとしたことが有名だが、これは「子守歌を聞かせ、母乳で育児」「授乳中はテレビをつけない」という、「教育再生でどうしてそれ?」と多くの人が首を傾げるシロモノだった。
「親学」というのは、「児童の2次障害は幼児期の愛着の形成に起因する」という教育理論。平たく言うと、母親に“子どもを産んだら傍にいて育てないと発達障害になる。だから仕事をせずに家にいろ”と強要するトンデモ理論で、科学的にはなんの根拠もなく、障がい者団体などから「差別」との批判まで受けている。ところが、山谷はこれに入れこみ、母親を家に縛り付けるような教育提言を内閣名で出そうとしたのだ。結局、この動きには自民党内からも疑問の声が挙がり、提言は正式採用されなかったが、山谷はいまも「親学推進議員連盟」のメンバーとなっている。
親学へのシンパシーからもわかるように、山谷のベースとなっているのは“母親の神聖化”“女らしさ”だ。何かというと「女性は女性らしく」「女性は母親という神聖な役割をになっている」ということを繰り返し主張している。だが、その“女らしい”という基準は、結局、明治から昭和初期の一時期に形成された恣意的な価値観にもとづくものだ。
たとえば、「正論」(産業経済新聞社)04年10月号で長谷川三千子と対談した際には、酒井順子の「負け犬」という言葉を曲解して、お見合いでもいいから女性は結婚すべきだ、ということを得々と語る長谷川に同意して、山谷は「それ(結婚)が女性の生き方として生物学的に理にかなっている」と言い切っている。……どうやら山谷に言わせると、結婚しない女は“生物学的”に欠陥があるということらしい。とんでもない差別主義者だが、もっとすごいのは、性教育に関する言動だ。
05年、山谷は安倍が座長である「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」の事務局長を務め、当時、一部の公立学校で行われていたオープンな性教育を徹底批判。教育現場はすっかり萎縮し、性教育を封印。その結果、現在は若年層の無知からくる望まない妊娠や性感染症が増加の一途をたどるという悲惨な状況におちいっている。