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「アイドル共産党宣言」は搾取されるアイドルたちを救えるか?

 PIP公式サイトによれば、目標として

・2020年にAKB48グループの「メンバー数」を超える。
・PIPから独立して生まれたアイドルグループは、「PIPグループ」のメンバーとしても帰属することで、メンバー数を拡大させる。
・いわゆる「会いにいけるアイドル」として適切な「小さな規模感」(メンバーとファンの距離感が遠くなりすぎない、ファンも現場に通いやすい、メンバーも仕事で忙しくなりすぎない等)を維持。

 などを挙げている。『前田敦子はキリストを超えた』でアイドルへの「近接性」がその宗教的体験の本質だと論じたぐらいだから、いまや国民的アイドルとなって久しいAKBに「遠さ」を感じ、内心不満に思っているのだろう。ちなみに、PIPプロジェクトはねずみ講的なシステムではないこともちゃんと明示してある。

 ところで、濱野が「新潮45」(新潮社)2013年8月号に寄せた「地下アイドル潜入記」で描かれるヲタの実態はなかなか興味深い。宗教的体験を求めて「毎日のように会いにいける」アイドルのいる「地下」に潜った濱野。地下アイドルヲタは「コスパ」という言葉を必ずといっていいほど使うという。AKBの場合、握手会は1000円のCD1枚につき10秒ほどの接触。対して地下アイドルの場合、1000円のブロマイドを買うと1分間会話ができて、サインもしてくれる。これがヲタにとって「コスパがいい」ということだ。さらに、ライブの帰りにヲタ仲間と一杯ひっかけるときには、徹底して安い居酒屋(生ビール1杯30円!)へ行くらしい。相当なデフレ現象である。

 なぜこれほどまでにコスパが重要なのか。濱野の周囲のドルヲタに関していえば、20〜30代のニートだからというのが理由のひとつ。ヲタを続けるには、アイドルグッズを転売して日銭を稼ぐ身軽なニートが一番「合理的」なのだという。

 そう考えると、共産党宣言はたんなるパロディではないのかもしれない。ためしに『共産党宣言』の「共産主義」を「ヲタ」に置き換えてみればいい。

 日本ではある種の幽霊がうろついている。「ヲタ」という幽霊である。古い価値観を持つ権力は幽霊を退治しようと、神聖な団結を行っている。その権力から「ヲタ」と罵られなかった者がどこにいるというのか。こうした事実から二つのことが自明となる。ひとつ、「ヲタ」はすでに、権力から力として認められている。ふたつ、「ヲタ」がその考え方、その目的、その傾向を社会に語り、「ヲタ」のおとぎ話を党として宣言して対峙させるのに今が絶好の時である――そう、「アイドル共産党宣言」とは「アイドルヲタ党宣言」なのである。

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