令和元年度警視庁採用サイトより
安倍政権を批判するデモや抗議活動で、警察が不当逮捕や違法な排除行動を繰り返していることはわかっていたが、まさかここまでやり口がエスカレートしているとは……。
〈「対レイシスト行動集団」メンバー、“車庫飛ばし”で逮捕〉
9日、TBSがこんなタイトルのニュースを大々的に報じた。ニュースは〈右派系市民団体のデモへの抗議を繰り返す「レイシストをしばき隊」、現在の「対レイシスト行動集団」のメンバーの男が、所有するワゴン車の登録地を偽って申請したとして警視庁に逮捕されました〉という原稿を読み上げ、男性を実名で報道。さらには警察署に移送される「顔出し」映像まで放送したのだ。
普通にリテラシーのある視聴者なら、この報道の異常性に気がついたはずだ。まず首をかしげざるを得ないのは、その容疑の中身だ。TBSによれば、都内在住のこの男性が所有する〈大気汚染を防ぐため都内での走行が法律で規制されていた〉ワゴン車を〈実家のある仙台市と偽り申請〉したなるもの。ようするに、車庫証明に登録した住所と違う場所で車を保管・使用したという、いわゆる「車庫飛ばし」の疑いなのだが、いやはや、こんな“微罪”で実名を晒され、顔までテレビで流されるって、普通に考えてありえない。
しかも、報道によれば男性がワゴン車を登録していたのは「実家」だ。うっかり現住所に移し忘れていたなんて話は、誰にだってありうることだろう。しかも、TBSによると男性は「都内で走ってもいいと思っていた」と供述しているというし、車のディーラーで「車庫飛ばし」で何台も売りさばいていたとかではない。どうみたって犯罪で利益を得ようとした形跡もなければ、悪意も感じられない。実際、東京地裁も11日に警察の勾留請求を却下し、男性はすでに保釈されている。
どうみても不当逮捕か別件逮捕としか思えないが、実際、男性を「車庫飛ばし」で逮捕したのは、通常の管轄である交通捜査課ではなかった。過激派や国際テロリストを捜査対象にしているはずの警視庁公安部、つまり公安警察だったのだ。
ようするに、公安はこの男性を「レイシストをしばき隊」の中心人物として、微罪で狙い撃ち、TBS に事前リークして移送現場を撮らせたうえ、実名を発表したということらしい。
いや、TBSだけではない。この件は産経新聞(ウェブ版「産経ニュース」9日)と読売新聞(10日東京朝刊)も実名報道しており、〈公安部によると、●●容疑者は、差別や憎悪をあおる「ヘイトスピーチ」などに抗議する団体の中心人物。車は活動資材の運搬に使用していた〉(産経)、〈●●容疑者は在日韓国・朝鮮人らを非難するデモに対する抗議を行うグループの一員で、ワゴン車を活動に使用していたという〉(読売)などと書き立てていた(注:記事は実名だがリテラ編集部で匿名にした)。大手紙社会部記者が今回の逮捕劇の裏側を解説する。
「過激派や右翼団体を摘発するために、『車庫飛ばし』などの微罪で別件逮捕し、息のかかったマスコミにリークしてさも重大事件であるかのように実名報道させるというのは、公安がよくやる手口。今回も完全にそのパターンでしょう。そうでなければ、『車庫飛ばし』のような微罪で逮捕、実名報道なんてありえない。しかも、今回の場合は悪質性もまったくなく、ほかの犯罪も何も出てこなかったため、容疑者がすぐに保釈されている。相当、無理な逮捕だったということです」
そもそも過激派であれ右翼団体であれ暴力団であれ別件逮捕は違法だが、公安は、過激派どころか、普通に差別に反対しているだけの運動まで狙い撃ちし、微罪で逮捕したのだ。ネットなどでは、常々、「警察はヘイト団体に甘くてカウンターに厳しい」「差別体質をもつ警察はカウンターを弾圧し、ヘイト団体をアシストしている」との批判がなされてきたが、まるでそれを証明するような行動ではないか。
しかも、本サイトが複数の関係者に取材したところ、この男性は「レイシストをしばき隊」でも、その関係者の一部が関わる後継団体「対レイシスト行動集団(C.R.A.C)」のメンバーでもなく、個人で反差別などのカウンター行動や抗議デモなどに参加していたことが判明した。つまり、公安は「レイシストをしばき隊」に所属さえしていない人物を勝手に「中心メンバー」と決めつけて逮捕、あげく虚偽情報をマスコミに流したのだ。