ちなみに、たけしはこうしたテレビの自主規制はネットの影響が大きいとその持論を展開している。
「ネット社会では、番組へのクレームが直接スポンサーにいってしまうから、テレビ局が萎縮してしまうんだよ。『お前の会社が提供している番組はこんなふざけたことを言っていたぞ!』と企業に直接苦情を入れたり、『不買運動を興せ!』とネット上でけしかけたりするヤツが出てきた」
たしかに、たけしの言うネットとテレビ、そしてスポンサーの関係は、そのまま安倍政権の関係に置き換えることもできる。番組で少しでも政権批判をすれば、ネトウヨや安倍親衛隊のネトサポが「売国奴」「在日」などといきり立ち、官邸に通報する。そして、安倍首相と官邸は、我が意を得たとばかりにテレビ局に圧力をかける――。そんな状況にテレビ局は恐怖し、何も言えなくなっているのだ。
実際、たけしの言葉の端々には、政治問題を扱う際の圧力や萎縮、自主規制に対する大きなストレスと憤りを持っていることも垣間みえる。そしてこんなエピソードを語る。
「正直にいえば、もっとガンガン毒舌を披露してやりたいってフラストレーションはあるんだよ。それもあって去年12月の衆院選当日は、ニコニコ生放送の開票特番に出てやったんだよな」
「何でも喋っていい」と言われたたけしは、そこでこれまでの鬱憤をはらすように政治について語ったという。「当選した議員に学力テストして、もう一回ふるいにかけろ」「“こいつを落とせ”ってヤツを選ぶ弾劾選挙をやるべきだ」と。
だが、今のテレビではたけしもこういった政治的発言は絶対にできない。いったいなぜこうなってしまったのか。
たけしはネットのせいだというが、第一義的な原因は、ひたすらもめ事をさけ、萎縮と自主規制を繰り返すテレビ局の弱腰体質にある。たけしも今のテレビは「思考停止」状態で、「反骨心さえ感じられない」というが、彼らはもはや、自分たちの既得権益と高給を守ることしか考えていないのだ。
しかも、それはこうやって一見、過激そうな発言をしているたけしも同様だろう。現実には、たけしもテレビで政権や世の中の空気にあらがうような発言は一切していないし、このインタビューでも、直接的に官邸の圧力を語ることはできなかった。
「最近のテレビじゃ何もいえなくてムカムカしてる」と言うなら、生放送の『ニュースキャスター』で古賀茂明ばりの爆弾発言でもしてほしいものだが、まあ、そのテレビ局から巨額のギャラを受け取り、トヨタのCMにまで出ている今のたけしには絶対に無理だろう……。
(林グンマ)
最終更新:2017.12.23 07:16