首相官邸HPより
国民が物価高騰に苦しむなか、岸田政権が血道を上げている防衛費の増額。来年度から5年間の防衛費の総額を43兆~45兆円程度とする方針だというが、ここにきて与党が防衛費の財源として所得税などの増税を視野に入れているという報道が飛び出し、Twitter上では「所得増税」がトレンド入りする騒ぎとなった。
岸田文雄首相は「所得倍増」を掲げて総理となったというのに、まさかの所得増税。この矛盾に反発が巻き起こるのは当然だろう。
しかも、所得増税の動きの一方で、法人税アップのほうは、経済界の圧力で削除されていた。
そもそも、今回の「所得増税」の端緒は、敵基地攻撃能力の保有などのための防衛費増額にかんして検討してきた「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」が22日、岸田文雄首相に報告書を提出したことにはじまる。
この報告書、原案では「財源の一つ」として法人税の引き上げが記されていたのだが、ところが提出された報告書では法人税の記述が削除され、〈歳出改革の取り組みを継続的に行うことを前提として、なお足らざる部分については国民全体で負担することを視野に入れなければならない〉と明記されたのだ。
「国民全体で負担」という文言は原案にもあったものだが、かたや財源のひとつとして名指しされていた法人税は削除される──。無論、この背景にあったのは、経済界からの圧力だ。
経団連の十倉雅和会長は10月17日におこなった記者会見において、防衛費の増額の財源として法人税の引き上げが検討されていることについて「法人税がひとり歩きするのはいかがなものか。長期にわたって広く集める、安定的財源が必要だ」と牽制し、「消費税に(低所得層ほど負担感が重くなる)逆進性があるのは理解しているが、防衛計画の質と合わせ幅広い議論をしてほしい」と発言。11月21日の定例会見でも「薄く広く国民、社会全体で負担するのが適切だ」と述べ、法人税の引き上げに反発するだけではなく消費税を財源にすべきという見解まで示していた。
そして、岸田首相はこうした経団連からの突き上げにあっさり屈服。実際、岸田首相は今月4日、十倉会長をはじめとする経団連幹部らと2時間あまりにわたって会食をおこなっているが、会食後、十倉会長は「ものすごく盛り上がった。経団連の月例会議に首相にゲスト出演してもらいたいくらい和気あいあいだった」と語っている(日本経済新聞11月14日付)。ようするに、事前に「法人税の引き上げを報告書では明記しない」と手打ちしていたということだろう。