実際、安倍元首相の北方領土交渉はひどいものだった。まず、2016年のプーチン大統領の訪日し安倍の地元・山口県で首脳会談を行った際、安倍首相(当時)は北方領土返還がさも前進するかのように喧伝し、メディアも大騒ぎを繰り広げたが、結局、何も進展せずに終了。
さらに、2018年の日露首脳会談直後には、「(2島引き渡しを明記した1956年の)日ソ共同宣言が基礎」と強調。政府関係者もマスコミに対して「2島は確実に取り戻す、ということだ」と話すなど、あたかも歯舞、色丹の2島返還に向けて前進しているかのように吹聴していたが、会談翌日に当のプーチン大統領が2島について「宣言で、主権がどちらになるかは記されていない」と、引き渡しを完全否定。翌年1月におこなわれた日露外相会談後のラブロフ外相の会見でも、2島返還以前に“主権は我々にある”と念押しされた挙げ句、“北方領土と呼ぶな”とまで言われてしまった。
結局、2島返還どころか「0島返還」のまま、プーチン大統領の詐欺的手口に引っかかって、まったく割に合わない膨大な経済支援を約束させられただけで終わったのである。
しかも、ロシアはその後、択捉島と国後島に艦艇攻撃用ミサイルを配備し、択捉島には高性能な地対空ミサイルを実戦配備するなど軍事拠点化を進めている。
ところが、日本側は、韓国などに対する態度とは対照的に、ロシアのやりたい放題、言いたい放題に対抗しようとしていない。それどころか、それまで毎年、2月7日の「北方領土の日」に政府が新聞各紙に広報広告を打ち〈北方領土は日本固有の領土です〉と宣言していたのに、2019年からは「日本固有の領土」の文言を削除するところまで後退させてしまった。これももちろん、安倍首相の意向を汲んでの措置だ。
先に、安倍の北方領土交渉について「お前も0点だっただろ」とツッコミを入れたが、実際は0点どころじゃなく、マイナスの状況にまで陥らせてしまったのだ。そんな人間が平気で「100点を狙って0点なら何の意味もない」などと言い出すのだから、この男には「恥」という感覚がないのか、と疑いたくなる。