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すぎやまこういち氏死去でマスコミが封印した歴史修正主義と性的マイノリティ差別肯定発言…朝日は五輪開会式を持ち出して絶賛

 今回にかぎらず、国内メディアは差別問題や排外主義に対して直接的に強い批判もおこなわず傍観者のような報道に終始し、そのことがこの国における差別問題に対する意識の低さを助長してきた。訃報記事でも、きちんとした言動の検証・批判がおこなわれるべきなのは当然なのに、その基本さえこの国の大手メディアにはないのだ。

 いや、この国のメディアの問題は、それ以前のレベルだ。というのも、大手メディアはすぎやま氏による差別発言の支持や歴史修正主義者としての側面を伝えなかったばかりか、すぎやま氏が安倍晋三・元首相の熱烈な支持者であったことさえ触れようとしなかったからだ。

 本サイトでも繰り返し伝えてきたように、すぎやま氏は安倍氏の下野時代に「安倍総理を求める民間人有志の会」の発起人を務め、再び総理の座に返り咲くにいたる“安倍復活を支えた応援団”のキーマンのひとり。安倍元首相の政治団体に対して毎年のように100万〜150万円の寄付をおこなってきたことはメディアも報じてきた事実だ。

 さらに、すぎやま氏は表立って安倍氏を支持してきただけではなく、「裏」からも応援。2014年には改憲推進団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の代表発起人となって安倍首相の手による改憲実現のために尽力し、2015年には安倍政権に批判的なニュース番組に圧力をかけ、当時『NEWS23』(TBS)で安保法案の危険性を指摘していたアンカー・岸井成格氏を番組降板に追いやった「放送法遵守を求める視聴者の会」の創立時に代表呼びかけ人にもなった。

 つまり、すぎやま氏の足跡を振り返る際、安倍晋三という政治家を陰に陽に支えてきたパトロンという側面はけっして外せないものだし、さらにいえば、安倍氏との接近はすぎやま氏の極右思想と切り離せない問題なのだ。

 ところが、訃報記事のなかで安倍元首相との強い結びつきについて言及したのは、産経新聞だけ。安倍元首相は本日18時ごろに〈2012年の総裁選、悩む私の背中を押して頂いたすぎやま先生。苦しい時もずっと応援してくださいました〉と追悼のツイートをおこなったため、今後、安倍氏とすぎやま氏の関係について触れた記事も出る可能性もあるが、それはあまりにも遅すぎるだろう。

 差別問題だけではなく、安倍元首相を強く支えてきたことさえなかったことにする。当たり障りのない訃報記事で済ませようというメディアの事なかれ主義の姿勢が、ここでもあらためて浮き彫りになったと言えるだろう。

最終更新:2021.10.08 09:56

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