このように、菅首相の直系である知事によって対応が後手後手になり、新規感染者数700人超えにまで至ってしまった北海道。しかし、これは北海道だけの問題ではない。ここまで全国で感染拡大を招いているのは、「五輪優先」「経済優先」の菅首相の信じがたい対応のせいだからだ。
それを象徴するのが、昨日、過去最多となる635人の新規感染者が確認された福岡の例だ。福岡は昨日12日から緊急事態宣言が適用されることとなったが、感染拡大は4月中旬から起こっており、現に4月16日の政府分科会では、日本感染症学会理事長の舘田一博・東邦大学教授が「大阪を想起させるような急激な増加だ」と指摘、尾身会長も「福岡については明らかに今、重点措置を打つ要件がそろっている」と言及していたことが公開された議事録からも判明している。
しかし、西日本新聞の検証記事によると、〈首相側近や政府高官は、福岡県が飲食店などに対する営業時間短縮(時短)要請を行っていなかったことを非難し、異口同音に「福岡はやるべきことをやっていない」「まずは地元でできることをすべきだ」と繰り返していた〉。さらに、4月22日以降に福岡市や久留米市で時短要請がおこなわれても、官邸サイドは「まずは時短の効果を見てからだ」と述べていたというのである(西日本新聞11日付)。
専門家から踏み込んだ指摘がおこなわれていたというのに、専門家の警告をまったく無視して放置しつづけた菅官邸。その結果、九州の中心都市である福岡から他県にも感染は広がり、福岡だけではなく長崎や大分、鹿児島でも病床使用率はもっとも深刻な「ステージ4」の基準を超えた。福岡赤十字病院の石丸敏之副院長が「このままでは『命の選別』をせざるを得なくなる」(西日本新聞13日付)と語っているように、“第2の大阪”となりかねない状況にまで追い込まれているのである。
いや、これは福岡だけではない。感染が拡大中の茨城、徳島、石川の知事から重点措置の適用を要請されながらも、政府はこれを拒否。本日になって菅首相は関係閣僚と協議をおこない、岡山・群馬・熊本・石川・広島の5県に適用する方針を固めたというが、政府に要請をおこなっていた香川や長崎などは含まれておらず、なんと北海道への緊急事態宣言の追加適用も見送る方針だと伝えられている。この期に及んでも、いまだに出し渋っているのである。
そして、菅政権がここまで頑なに重点措置の対象地域拡大を渋っているのも、やはり東京五輪開催のためだ。前述した西日本新聞の検証記事には、こうある。
〈関係者によると、政府は適用対象地域を追加すれば、時短に対する協力金など財政支援の国庫負担が増えることに加え、東京五輪・パラリンピックを控えてこれ以上、国内感染が悪化しているイメージを持たれたくないとの思惑があったとされる。〉