しかし、それも当然で、この育鵬社の教科書、そもそも安倍氏が全面的にバックアップして誕生したものなのだ。
この教科書が初めて出版されたのは2011年。主導したのは、教育再生会議委員の八木秀次氏だったが、最初の教科出版記念シンポジウム「日本がもっと好きになる教科書誕生」では、当時、野に下っていた安倍氏が登壇。東京書籍の教科書を名指しで左翼的と批判したうえで、こう高らかに宣言した。
「私が安倍政権時代になしとげた教育基本法の改正、この教育の目標をきっちりと受け止めて今回、教科書をつくっていただいた。それが育鵬社の教科書であると確信を持って申し上げることができるわけであります」
ようするに、安倍氏のバックアップを受けて生まれた育鵬社の教科書は、第二次安倍政権下の教科書改訂で、安倍氏の政治宣伝のための教科書と化したのである。
男女平等を解説するページで山田氏をクローズアップしたのも、おそらくその延長線上で出てきたものではないか。
そもそも、育鵬社の教科書をつくっている「教科書改善の会」の思想は、女性の社会進出や男女平等と相容れるものではないが、文科省の指針でふれざるをえない。そこで、山田氏ならば安倍首相の功績をPRすることになると考え、首相秘書官に採用されたにすぎない山田氏をあたかも「女性の社会進出の象徴」として無理やり入れたのだろう。
何から何まで、安倍サマがらみのオンパレード。まるでどこぞの独裁政権の国の教科書のようだが、しかし、これが当時、安倍政権下で推し進められていた教育右傾化の正体なのだ。そう考えると、今回の山田氏の高額接待問題は菅首相の身内による汚職政治の実態を暴いたと同時に、安倍首相時代にいかにトンデモなことがおこなわれていたかを証明することになったといえるだろう。
(田部祥太)
最終更新:2021.02.27 11:01